前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第173回
北朝鮮のデンマーク・バーガー屋

北朝鮮で開店の準備を始める前に、
デンマーク人のダンと仲間は
「いかにして大統領に敬意を払うか」を学びました。
間違っても「御真影を踏んではいけない」とか
「金正日の写真の載った新聞を包み紙に使ってはいけない」
といったことです。
ダン達のホテルの部屋には、
盗聴用のマイクロホンが幾つも備え付けられていました。

さて7つのテントが張られて、準備が進められました。
このテントでテストして、
成功したら本物のレストランでチェーン店を展開する予定です。
ケチャップ、マスタード、ソーセージ、パン・・・
材料は軍の飛行機で北京から運ばれました。
こういった食べ物は誰が食べるのでしょうか?
バーガーは平壌の町の人ために売られるのではなくて、
実は観光客に売るのが目当てに開く店なのでありました。
外貨の極度に不足する北朝鮮は、
年に1度の国の文化祭(祖国解放戦争勝利記念日?)に
やって来るはずの客を当てにしていたのです。
大競技場で上映する、
侵略者との戦いで全戦全勝する北朝鮮軍のフィルムや、
戦力誇示のための軍隊の大パレードなどが目玉です。
一行はその時期に合わせて呼ばれたのですが、
もう日にちが無いので急いで宣伝をして、
旅行者を呼ばなければなりません。
そこで比較的近くて来易い北京で、
北朝鮮がいかに素晴らしい観光地かを泥縄で宣伝しました。

そして・・・開店して何日もたたずして、
この事業の予測が甘いのが明らかになってきました。
まったく商売にならないのです。
政府の予定では、毎日3000から7000人の観光客が
北京から訪れるはずでしたが、いったい何10人来たのでしょうか?
だいたい、急に宣伝して
「今すぐ見にいらっしゃい」と誘われても、間に合わないのです。
ビザが下りるのにあんなに時間がかかるのに、
宣伝されても“今すぐ”なんて来られる訳がありませんのです。

そして・・・開店6週間目に停電になりました。
金日正、正日親子の銅像にはこうこうとライトが当たっていますが、
テントの中は真っ暗になってしまいました。
35℃の気温の中で、食材はどんどん悪くなっていきます。
そこで政府は決断して、
政府が引き取って食料を無駄にしないことにしました。
これでこのお話はお終いです。
“北朝鮮政府に失敗という言葉はないので、
こういう処置になったのか”
と、ダンは考えました。


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2005年3月15日(火)

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