第132回
外国人はやる気が違います
外国人は優秀な人でも教育を受けた人でも、
なかなか自分の専門職に就けない人がたくさん居ます。
デンマーク人なら比較的容易に見つかる仕事も、
言葉や習慣のハンディが有ります。
しかし、そうであるから、小さな商店に就職しても背水の陣だし、
将来の独立も頭にあるのでやる気が違います。
(もっとも、この“背水の陣”は、
語源では日本とは別の意味のようですが)
イラジさんは失業していたのに働いていたのは、
労働組合から
「仕事のトレーニング」という名目の出向だったのです。
長期失業者は、色々な資格をとる研修に行ったり、
イラジさんのように、トレーニングに廻されたりするのです。
研修では、雇い主から普通の給料を支払われますが、
その雇い主には十ヶ月の間は補助が出ます。
もし、そのまま働いてもらいたければ、
新しく契約してそのままそこで続けます。
イラジさんはそういう立場で八ヶ月程働いていました。
その仕事が気に入っていましたが、
新しい契約を催促しても返事が貰えないので、
私の店にやって来ました。
長期失業者が、特に施設などを希望する場合は、
怠けたい人が多いのです。
麻薬患者とか持病を持っている人が、
長期失業者になる可能性も高いのです。
コンピューターの修理や、色々な道具の修理は絶えず有るので、
専門家に頼むとお金がかかるのです。
イラジさんはそれ等の簡単な修理が出来ました。
では、なぜ高校はイラジさんを契約しないか不思議ですが、
高校にお金がないので、
どうすればよいか決め切れないようでした。
多才なイラジさんでしたが
「3x4はいくつだっけ?」と、
必要になる度にチュンにそっと聞く、というのでビックリしました。
掛け算が苦手でした。
そんなこともあってか、
お客を相手するのはあまり好きではなかったようです。
イラジさんの以前の仕事場の、私の知り合いに電話してみました。
すると
“小さい頃から一人で色々と苦労をした人でね”と、いう話でした。
さて、それでは私の店で“正式採用”という日に、
イラジさんは恐縮して、困った顔でやってきました。
高校から採用したいという通知がきたのです。
私もイラジさんは、
便利屋として感謝、感心されながら高校で働く方が、
性に合っていると思いました。
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