第88回
ノルウェーの森
デンマークに来て間もない頃、
いとこが日本からやって来たので
車を買ってヨーロッパをまわったことがありました。
デンマークで車を買うと高いので、
ドイツに行って旅行者の従兄弟の名義で買うことにしました。
楕円形の税金免除の
インターナショナル・ナンバー・プレートを買いに
ハンブルクまで行きました。
旅行者は半年間までは税金を払わずに乗り回せたのです。
ドイツではデンマークの大体三分の一のお金で車が買えます。
音楽好きのいとこが
オーディオ・カセットをどっさり持ってきたので
走りながらずっとテープを回していました。
ビートルズのカセットはよく聴きましたが、
その中にこちらで暮らしてみて初めて解った歌がありました。
それがビートルズの「ノルウェーの森」ですが、
この歌には北欧の女性が共有する独特の感じがよく出ています。
女の子はのびのびと、堂々と、
健やかに育つことができるようです。
そこで、大人になると男の人と対等に振る舞い、
協力し合いながらも生活をリードしていく力があります。
「デンマークの男性は
女性のためにドアを開けて待っていたりしない。
その行為はここではほとんど
“女性蔑視”と、とられてしまうから」とは
ノヴォ・デンマークの人事部長の言葉です。
“ノルウェーの森”
― 俺に(ジョン・レノン)ガールフレンドがいた時
いいや、俺が彼女のものだった時、と言うべきか。
・・・・・・・・
初めて見た彼女の部屋には椅子一つ有りゃしない
俺たちは夜まで
時間潰し(ジョンにはそう思える)のお喋りをして
彼女は「じゃあ、もう寝る時間だから。
明日は朝から私は仕事だからね」
と、俺の顔色を見て笑い出した。
俺は「けど、俺は、明日は仕事ないよ」と言ったんだ。
でも仕方ない、俺は眠たくて眠たくて、
這って行ってバスタブの中で眠ったのさ。
目が覚めたら一人ぼっち。(小鳥は空に飛んでいく)
すてきじゃないかい、ノルウェーの森 ―
だいたいこんな感じだと思います。
けっして誰にも自分をリードさせない独立心があって、
男の人と仲良しになっても
自分のペースを崩さないのです。
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