前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第70回
報われたレストラン

私が一人で店の経営を始めてから間もなく、
店の近くに小さなレストランがオープンして
雑誌に紹介がありました。
イギリス人のコックとデンマーク人の奥さんが2人始めた店で、
内装は船のキャビンをイメージして作られたそうでした。
いつも新聞、雑誌の評価はあんまり当てにならないのですが、
近かったので二人で試しに行きました。

今ではジェイミー・オリバーという
若いイギリス人のスーパー・コックが出たりして、
イギリスのコックも見直されています。
でもその頃はまだ、
あの“食べ物のまずいイギリス”というイメージが抜けません。
店に入ってみると小船のように狭い店ですが、
壁の色や真鍮の手すりなど、
その色調のセンスの良さに感心してしまいました。
メニューのみで4品
1人約5千円の料理に3千円の赤ワインで食べました。
濃いオマール海老のスープの深みのある美味しさに驚きました。
次にカマスのグリルが出て、
メインの仔鹿のステーキにシャーベットのデザートまで、
なんと、どれもこれもとても美味しいのです。
この値段でこの味は出来すぎだと思いました。
試しにもう一度行ったら
この時も又とても美味しかったのです。
味をしめてそれから外で食べる時は
2回に1回はそこを選びましたが、
狭い店とは言えいつ行ってもお客が2組位しかいません。
潰れては残念なので応援のつもりで、
それからも引き続き通いましたが、いつもいつも美味しいのです。
そしていつもいつもお客が少ないのです。
それから四年がたって、
コックのご主人が相変わらず
自転車で材料を買いに出かけるのを見かけました。
サービスするのも奥さん一人です。

ところがここに転機が訪れました。
「今まで気がつかないで御免なさい」というコメントを添えて
ミシュランの星を貰ったことが
新聞に大きく載りました。
この夫婦の「もう辞めようかとも思っていた」とか
「私達の店は外国人のお客が多いのです」というコメントも
載っていました。
私達はパリの後でプロヴァンスや
ブルゴーニュ食紀行のツアーなどにも参加しましたが、
このレストラン、ゴッツはかなり美味しい方だと思います。
コペンハーゲンには二つも星を貰った店も有りますが、
ゴッツのように安定していないような気がします。
その他の星付の店は、
鮭や海ザリガニなど地元の名物を出すので点が高いようですが、
料理の技術にはあんまり感動しません。

ゴッツはそれ以来お客が増えすぎて、
電話予約の受付の時間帯も午前中に限られてしまいました。
子供と一緒の生活を大事にするために、
デンマークの学校の休みの時期にはお店も休みです。
値段もメニューで1万円を超えるようになりました。
それから我々も安心(?)して前ほどには行かなくなりました。
今は1段上のクラスを目指していて、味はお勧めです。

“Godt”
 住所:Gothersgade 36
 電話:+45(デンマーク)3315 2122


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2004年10月22日(金)

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