前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第20回
常夏の店

初めはどうなる事かと思いましたが、
三年目になるとお客が増えてきました。
最盛期の夏には残業の日が続きます。
慣れてくると我々の動きが機械より早くなってきて
待っている時間が無駄でした。
そこで工夫して機械のスピードを上げることに成功し、
カタログの1時間の処理数より多く
プリント出来るようになりました。
カタログの最高処理数そのものが
現実には色々障害があってなかなか実現できないものなのです。
それを考えると随分早くプリントしていたのだと思います。
一、二年目は小さなトラブルがたくさんありましたが
何とか落ち着いてきましたし、
大きな故障で機械が何日も止まるという
恐れていた事態には一度も陥りませんでした。

プリントする時は
フィルムの下から150Wのハロゲンランプを当てて
それを見ながら色の調節をするのです。
プラスチックのフィルターが光を弱めてはくれますが、
ネガは小さくて光は強いので目が疲れます。
そこで大型の四角いレンズをフィルターの上に置いて
フィルムが大きく見えるようにしました。
その上でサングラスを掛けると目が楽になりました。

こういうことは皆、機械の会社の本社にレポートされたそうです。
薄暗い冬の日などに半地下の我々の店にお客が下りてくると、
薄着の東洋人がサングラスを掛けて仕事をしているわけです。
プッと噴出して
「あなた今、夏じゃないんだよ。ホリディみたいだね」
と、よくからかわれました。
そういう時は
「だから夏休みはいらないんだ。いいだろう?」
とやり返しました。
処理液の温度が上がりすぎると扇風機を当てました。
すると処理液の温度は下がりますがその分だけ室温は上がります。
現像液の処理温度は37度ぐらいですが
乾燥機は60度ぐらいなのでどんどん室温を上げます。
夏は「暑かったあ」です。
どんなに暑くても稼ぎ時ですから
私達には夏休みはありませんでしたが。
そこで秋と春には交代で休みを取りあって旅行に行きました。
冬は夏の半分もフィルムが来ないのでゆっくりできる・・・
というより暇でした。


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2004年8月13日(金)

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