服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第967回
ポロ・コートに学ぶ年輪の美しさ

ポロ・コートを着たことがありますか。
もともとはスポーツ観戦用のコートですが、
今では旅行者をはじめとして
スポーティーな場面には最適のものです。

ふつう両前型の6つボタンで、
両脇にパッチ&フラップのポケットと、
背にハーフ・ベルトが付きます。
スポーツ・ジャケットやブレザーの上にも
よく似合うものです。
色は伝統的にキャメル・カラーが多い。
これはかつてキャメルズ・ヘアー
(らくだの毛で織った生地)で
仕立てられたところから来るものです。
ただしポロ・コートの場合は、
グレー系、ブルー系をはじめとして、
たいていの色調に合わせることができます。

ポロ・コートは
実はアメリカ生まれのコートなのです。
もっとはっきりいえば、
ブルックス・ブラザーズによって命名されたコート。
ブルックス・ブラザースとポロとは
なにかと縁が深いようですね。
それは1890年頃のことで、
当時は白い、ウール地のコートで、
やはり白いパール・ボタンが付いていて、
今のように背バンドではなく、
全体にぐるりとある共ベルトであったとのことです。

もちろんイギリスでのポロ競技にも
使われたでしょうが、
選手たちが競技の合間に
軽く羽織るためのコートであったのです。
今でいえばウインドブレーカーでしょうか。
当時のユニフォームはたいてい白であったので、
その上に重ねるコートも白で揃えたのでしょう。

もちろん最初はブルックス・ブラザーズも
競技用コートとして紹介したのですが、
街着用としても使う人がふえたために
ライト・ブラウンやライト・グレーでも
仕立てられるようになったのでしょう。
ポロ・コートの元祖は
むかし御者が馬車を操る時に羽織った
ボック・コートであろう、と考えられています。

それはともかくポロ・コートは
年期を重ねるほど美しくなってゆく特徴があります。
袖口のケバが少し薄くなっているのは、
年輪であり、成熟であります。
私たちもポロ・コートのように
年期を美しさに変えたいものですね。


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