服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第949回
隠しておくための男のおしゃれ

サスペンダーは何本持っていますか。
2本、3本、4本、・・・。
私はサスペンダーの本数と
その人のおしゃれ度は
密接な関係にあるだろうと考えています。
少なくともおしゃれを目ざそうというのであれば、
1本は必要でしょう。
ふだんはチョッキやジャケットに
隠れてしまうものですが、
着こなし上は重要な小道具なのです。

ニュートンの引力を引合いに出すまでもなく、
自然界ではモノは上から下に
落ちることになっています。
パンツもその例外ではありません。
だからこそたいていはベルトで
腰に固定しておこうとするわけです。
もちろんベルトにはベルトの良さがあります。
でも、純粋にファッション面だけから考えるなら、
やはりサスペンダーが優れていると
言わざるを得ません。

まず第一に、
パンツを一定の位置で支えておく機能について
優れています。
次にパンツの上にヴェストを重ねる、
スェーターを重ねるといった組合わせの場合、
よりすっきりと細身のシルエットを表現できるからです。
要するにウエストのあたりを
ゴロゴロさせないですむわけです。

とにかく最初の1本はお試しのつもりで、
パンツに使ってみて下さい。
おそらくパンツの穿き方について、
ベルトの場合とはまったく違った印象になるでしょう。
常にパンツを最良の位置に保つことが出来る。
これは気持の良いものです。
男性版の「小股の切り上がった状態」とでも申しましょうか。

さて、2本目のサスペンダーを買うなら、
ややクラシックなボタン留めのものをおすすめします。
パンツの裏側にそれ専用の
小さなボタンを付けておけば良いのです。
さらに3本目ということになれば、
サスペンダーの帯の部分に、
刺繍などの美しい模様を配したものを選びましょう。

絶対に人目には見せないけれど、
自分なりの満足のゆくアクセサリーを身につける―。
このような考え方こそが、
男だけのファッションの愉しみでもあるのです。


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