服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第939回
古いタキシードの新しい再生術

モス・ブラザーズを知っていますか。
略して「モス・ブロス」。
イギリス人で知らない人がいない位有名な
貸衣屋のことです。
ロンドンはキング・ストリート27番地にある大きな店舗。
ありとあらゆる衣裳が揃っていて、
まず無いものが無いほどの充実ぶりです。

そもそもの開業は1860年、
モーゼズ・モーゼズという人物がはじめた
小さな古着屋だったのです。
が、このM・モーゼズのふたりの息子、
アルフレッドとジョージが後を継いで、
次々と大きく発展していったのです。
モーゼズを“モス”Mossに変えたのも、
成功のひとつであるかも知れません。

冠婚葬祭をはじめとして、
パーティー・ウェアや仮装衣裳などは、
いつも必要があるとは限りません。
必要な時だけあれば良い。
貸衣裳屋の流行る理由がここにあります。
けれどもタンスの奥を探してみると、
いつ着るのか、いや、いつ着たのかも分らない
タキシードの1着や2着がきっと眠っているはず。
もちろん私の場合もご同様です。

正直な話、タキシードではあるけれど、
今やもう着るに着れない。
年代物でありすぎる。
でも、捨てるに捨てられない。―
こんな時にこそ、
新しいアイディアが生まれるのです。
ちょっとしたディナー・パーティーに、
その年代物のタキシードを着て行ったのです。

薄手の白いタートルネック・スェーターの上に
そのタキシードを羽織るだけ。
ほかはホワイト・ジーンズに
ホワイト・シューズという出立ち。
まったく異質なものを組合わせることで、
古いタキシードがオッド・ジャケットか
ファンシー・ジャケットのように思えてくるから、
不思議です。
それにしてもタートルネック・スェーターに
タキシードは悪くないアイディアです。

また、時と場合によっては
年代物でありすぎるタキシードに、
まさに年代物のブルー・ジーンズでも組合わせるのも
ひとつの方法でしょう。
モス・ブラザーズが昔、古着屋であったことから、
つい話がヴィンテージ・ジーンズになってしまいました。


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