服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第902回
あえてネクタイを応援しましょう

人助けをしたことがありますか。
昔から「弱きを助け強きをくじく」
と言うではありませんか。
また別に「判官びいき」という言葉もあります。

今、私の目から見ての弱者はネクタイです。
ネクタイなんか無いほうが良いじゃないか、
というのが大方の風潮になっています。
私だっていつもかつもネクタイを
結んでいるわけではありませんが、
ここまで悪者扱いされると、
可哀想になってきます。

結論を言いますと、
どのように時代が変わろうと、
ネクタイ(もしくはそれに代るもの)は無くなりません。
人間に顔がある以上、
ネクタイ(またはその代用品)は不滅です。
それというのも人類の歴史をふり返ってみて、
広い意味での首飾りが存在しなかった時代は
まず無いからです。
古代エジプトにも身分の高い人は、
黄金の装飾品を首に飾ったものです。

人は例外なく相手の顔から
少しでも多くの情報を読み取ろうとします。
極端な例を挙げるなら、
人相占いがあるほどです。
顔を見る、表情を読む。
でも実は、顔のまわりの背景
一緒に読み込んでいるのです。
たとえばスカーフ、首飾り、ネクタイ・・・。
無意識のうちに
それらの背景をも読み込んでしまう。

たいていの人は
その無意識感情もまた
大切であることを知っているから、
いつの時代にもネクタイ
(またはそれに代る小道具)が
消えることはないのです。

<ネクタイは現代人の戦旗である>
かつてデザイナーのジョン・ワイツは
こう言ったものです。
日本風にいえば旗印といったところでしょうか。
要するに長い目で見れば、
ネクタイ(もしくはその類似品)は
なくなりはしないのです。

それならばもっと積極的に
ネクタイを利用しようではありませんか。
もしも戦旗であると考えるなら、
日々異なるようでは困ります。
ある一定のテーマに従った、
いかにも自分らしいネクタイを愛用したいものです。


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