服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第779回
ネクタイに教えてもらった良いこと

どうして男はネクタイを締めるのか、
不思議に思ったことはありませんか。
たかが1本の細長い帯ではないか、と。
もちろん規則で決められているわけではありません。
実際にいつもノオ・ネクタイを主義として
通している人もいるでしょう。
絶対ではないけれど、
なぜか無視できない1本の帯というべきでしょうか。

これは軍隊などの立襟(詰襟)と
関連づけたほうが
分りやすいかも知れません。
かつて多くの国で、
高い立襟が軍服として採用されていました。
さぞかし窮屈なことであったろうと思います。
でも、あの窮屈なほどの立襟のために、
正しい姿勢が保たれていたのではないでしょうか。
そして正しい姿勢を保つことが、
正しい規律につながることだと、
考えられたためでしょう。

たしかにネクタイは締めないほうが、楽です。
でも、その一方で、
どうしても顎が前に出、
背筋が丸くなろうとする。
まさに一長一短です。
しかし自分の姿勢をより美しく保つための道具だと、
割切って考えるのもひとつの方法かも知れません。

さて、ネクタイは男にとって
必要な道具だと考えてみる。
そして道具であるからこそ、
装飾性が必要なのだと。
つまり姿勢矯正器として隠すのではなく、
堂々と自己表現の手段として使おう。―
ここにネクタイならではの二面性と面白さがあるのです。

たとえば自分なりのテーマ・カラーを設定する。
グレー、ワイン、ピンク、
ゴールド、ヴァイオレット・・・。
もちろん柄の設定という方法もあるでしょう。
常にペイズリー柄のネクタイを
締めている男であるとか。

さらには結び方による自己表現もあるでしょう。
たとえば私の場合なら、ダブル・ディンプル。
結び目の両脇に、小さな凹みをつけて結ぶ。
より美しい立体感が生まれるからです。
ネクタイは女性の着物の帯に似たところがあって、
立体的であればあるほど、
造形的であればあるほど美しいとされます。
ネクタイをより肯定的に考えることによって、
きっと新しい結び方が見つかります。


←前回記事へ 2005年2月25日(金) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ