服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第732回
ボヘミア・ガラスの爪やすり

ゆっくりと落着ける喫茶店を知っていますか。
今はもう簡便なカフェ全盛期で、
むかしのような喫茶店は姿を消しつつあります。
でも探せばそれでもあることはあるのです。
たとえば「ぶどうの樹」(TEL 5447-2411)。
白金台にある小さな喫茶店で、
先日、偶然に見つけたものです。
もし、家の近くにこんな喫茶店があったなら、
たぶん私は毎日通うでしょう。
ことに店の奥、
左端のデーブルは心持ち高くなっていて、
本を読んだり手紙を書いたりするのに最適でしょう。
ついつい居心地が良くて、
3時間でも4時間でも腰を落着けてしまいそうです。

この店の椅子もテーブルも、
必ずしも揃ってはなくて、時代がかった、
それぞれに味のあるものが置かれています。
これもまた、どこか懐しさを感じさせる
ひとつの理由でしょう。
壁に沿って小さな棚があり、
これまた小さなアンティークが並べられていて、
すべて売物なのです。
アンティーク・ショップのような喫茶店。
まだこんな店があるんですね。

「ぶどうの樹」でひとつ珍しいものを見つけました。
それはガラスの爪ヤスリ。
形はまったくふつうの爪ヤスリなのですが、
すべてガラスで出来ているのです。
それもチェコのボヘミア・ガラス製だというのです。
1本、1500円。
もっともこればかりはアンティークではなく、新製品。
新しもの好きの私としては
早速1本買って使ってみました。

通常のガラスの約4倍の強度があるとのことですが、
爪へのあたりはまことに柔らかい。
ごく自然で、なめらかに動いてくれるのです。
従来の金属製のヤスリとは
まったく使い心地が違います。
爪ヤスリはボヘミア・ガラスに限る、
と言っても過言ではないでしょう。

爪ヤスリ自体が汚れたなら、
水とブラシとで簡単に洗うことができます。
ただし強いとはいえガラス製ですから、
固い所に落としたりしてはいけません。
私もこれで爪をきれいに磨いて、
上質のシルクのネクタイをゆったりと、
念入りに結ぼうと考えています。


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