服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第728回
おしゃれは首元からやってくる

ディッキーを知っていますか。
あまり耳なれない言葉かも知れませんが、
れっきとした英語です。
ふつうは“ディッキー”dickeyと綴りますが、
時にdickyあるいはdickieと綴ることもあります。
本来の意味は「シャツの胸当て」のことです。
正装用の、固く、装飾的なフロントで、
とくにこれが着脱自在な場合に、
“ディッキー”と呼びます。
またこれに似た、
女性用ブラウスのフリルなどで飾った
胸当てのことも指します。

しかしもうひとつの意味に
「タートルネック」があります。
なぜ「タートルネック・スェーター」ではないのか。
実はスェーターそのものではないからです。
首の部分だけ。
もちろんタートルネックの部分に続く、
若干の前後の垂れはありますが、
スェーターそのものではない。
が、上にシャツなどを重ねると、
いかにもタートルネック・スェーターを
着ているように見える。
これが“ディッキー”なのです。
俗に「ネッカー」と呼ぶこともあります。

色違いで何枚か持っていると、
多様なコーディネーションが楽しめるでしょう。
また首元をすっぽり包むだけでも温かく、
また実際にはまったくかさばらないのもメリットです。

ただし現在では
ディッキーの市販品はあまり見かけません。
編物の上手な人に編んでもらえると良いのですが。
でも、ディッキーが入手できなくても
失望することはありません。
スカーフ1枚あれば
ディッキー風の自在な着こなしが可能です。

薄手の、細長いスカーフをタテに畳みます。
スカーフのほぼまん中を、首の前に当てて、後ろにまわす。
後で交差させてから再び前に戻す。
前に戻した両脇を一重(ひとえ)結びにする。
と、アスコット・スカーフがあるような、
はたまたタートルネックがあるような印象になるでしょう。
もちろんこの上に
スポーツ・シャツなどを重ね着するわけです。
当然、温かくて、着ぶとりとは無関係の、
すっきりとした着こなしが完成します。
本当におしゃれとは知恵とアイディアとで
無限の拡がりがあるものなのです。


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