服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第669回
ローマ数字のおしゃれな計算

ローマ数字を書けますか。
もし書ける方はどうか怒らないで下さい。
1、2、3・・・というアラビア数字に対して
I、II、III・・・と書く数字のことですね。

広く知られているように、
アラビア数字よりもローマ数字のほうが、
はるかに古い歴史を持っています。
英語で「計算する」の
“カリキュレイト”caluculate は、
ラテン語の“カルキュルス”caluculus が語源。
これは「小石」の意味です。
むかしの人びとは朝晩、
自分が飼っている家畜の数を確認した。
この時、10頭づつに小石を置いて、
間違えないようにしたのです。

I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、
XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI・・・
となるわけです。
すでにご存じの方は復習になりますが、
しばらくおつき合い下さい。
つまり5は「V」、10は「X」で示されるわけです。
どうして「V」が5を意味するのか。
これは片手を大きく開いた形を示しているのです。

「X」は「V」をふたつ重ねた形だから
10の意味になるわけです。

そしてVの左側に I を置くと、引き算になります。
逆に右側に I を置くと、足し算になります。
「IV」は4、「VI」は6というわけです。
「X」についてもまったく同じ考えかたです。

では、数字が大きくなった時にはどうするのか。
もちろんちゃんと記号が用意されています。
「c」が100を、「M」が1000を意味します。
これもやはりラテン語の
“セントゥム”centum 、
“ミッレ”mille が
それぞれの語源となっています。
これらの記号を組合わせれば、
たいていの数字を示すことができるわけです。

ただしひとつだけ例外があります。
時計の文字盤。
この場合に限っては「4」は「IIII」と記される。
ある国の、ある王様がたまたま四世であり、
V から I をひくのは縁起が悪いと、
許さなかったからです。
この伝統以来、時計だけは例外的に
「IIII」が使われているのです。


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