第652回
ネクタイの結び目の謎
今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
shigeo kakudou 様から
「ネクタイとノットの相性」について
質問メールをいただきましたので、
そのご回答を掲載させていただきます。
■ shigeo kakudou 様にいただいたメール
件名:ネクタイとノットの相性
出石先生へ。
いつも楽しくコラムを拝見させて頂いております。
以前より私の質問をコラムに取り上げて頂きまして、
誠にありがとうございます。
つい最近ネクタイとノットの相性について
新たな発見を致しまして、
今回もあつかましく質問させて頂く次第であります。
それは色柄は大変気に入っているネクタイなのですが、
プレーンノットとしては結び目が小さくなって
シャツの襟の大きさとのバランスが悪くなり、
さらには小剣が大剣の下から出てしまって、
全体的なバランスも悪くなってしまいます。
そこでダブルクロスノット
もしくはセミウィンザーノットにすると
結び目とシャツの襟の大きさとのバランスは良くなるのですが、
結び目がどうもきれいではなくなってしまいます。
ところが先日このタイを、
私が本で読んだだけで今まで一度も結んだことのない結び方、
ウィンザーノットで結んでみたのです。
するとどうでしょう、
結び目の大きさ、美しさ、襟の大きさとの相性、
全体的なバランスの全てがしっくりと納まったのであります。
ここで先生に質問ですが、
ネクタイというものは
それにふさわしい結び方というのが
あらかじめ設定されているものなのでしょうか?
■出石さんからのA(答え)
ご丁寧にもお便りを下さり、
ありがとうございます。
またいつもお目通し頂いておりますことにも、
深く感謝申上げます。
ネクタイの結び目と、
シャツの襟とのバランスについて
留意されているご様子、
かなりの洒落者と拝察致します。
私なども時として、
襟の開いた角度と、
結び目の三角形の角度とが、
気になることがあります。
たしかにこの両者の相性が思い通りに揃うのは、
気持の良いものです。
ご存じのようにネクタイの幅は
背広の襟幅とも関係があります。
背広の襟幅が広い時は、ネクタイの幅も広い。
逆もまたしかりです。
大きな流行の流れとしては、
およそ30年位の周期でゆっくりと、
広くなったり狭くなったりを繰返しています。
現在ではだいたい大剣の幅が
10センチくらいのものが
中心ではないでしょうか。
さて、kakudou 様のご興味は、
メーカーの意図と、結び目との関係のようですね。
ごく一般的には、ネクタイ・メーカーでは
結び方を特定していません。
プレーン・ノットから
ウインザー・ノットに至るまでも
さまざまな結び方を想定しています。
ただし、テーマ性が明確なネクタイの場合には、
この一般論は当てはまりません。
デザイナーズ・ブランドでは
当然、全体の服装に合わせて、
小さく結ぶか大きく結ぶかの
具体的な方向性が決まっています。
また、トラディショナル・モデルを得意とする
メーカーなどについても
同じことが言えるでしょう。
つまり先端的なフォッション・メーカーと、
ネクタイ専業メーカーとの違いもあるわけです。
参考になりますかどうか、
80年代はじめ、「ボトル・ネック」という形のタイが
登場したことがあります。
これは結び目の部分をとくに太く仕上げたもので、
プレーン・ノットでもかなりの大きさが演出できたのです。
ちょうど壜のかたちに似ているので、
その名前で呼ばれました。
それはともかく、
結び目のバランスに気をつかうようであれば、
おしゃれもかなり上級生であります。
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