服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第612回
魯庵とルーズリーフ・ノート

今回は、日ごろご愛読下さっている読者の
林 智久 様から
「第606回 ルーズリーフ・ノートと遊びましょう」について
メールをいただきましたので、
そのご回答を掲載させていただきます。


■ 林 智久 様にいただいたメール
  3つ穴のルーズリーフノートを売っているところにつきまして

出石様

いつも楽しく読ませて頂いております。

3穴のルーズリーフノートを売っているところを
探しておられるとのこと。

ソニープラザに、あるかもしれません。

実際に確認して、お知らせすべきですが、
事情があって、すぐには確認できそうにありません。

また、丸善などの洋文具を扱う店であれば、
取り扱われているかもしれません。

あいまいな情報で、恐縮ですが、ご参考まで。

林 智久


■出石さんからのA(答え)

ご親切にもお便りをお寄せ下さり、
ありがとうございます。
また、日頃からお目通し下さっていることにつきましても
深く御礼を申上げます。

3つ穴のルーズリーフ・ノートは、
「ソニー・プラザ」、
または「丸善」に置いてあるのではないか、
との情報、ありがとうございます。
なるほど、言われてみると可能性大ですね。
早速、買い求めに行くつもりです。

正しくは“ルーズリーフ・バインダー”と言うのだそうですが、
この原型はすでに1900年代からあったとのことです。
1枚1枚の用紙を、金属製のリングで
自由にとじておく工夫ですね。
どこの国で考案されたのかは知りませんが、
とにかくすでに外国にはあったそうです。

この外国製バインダーをヒントに
日本製が作られたのは、
大正時代はじめのことです。
内田魯庵(1868〜1929)が
『きのうけふ』(私は未見)という随筆のなかで
ルーズリーフ・ノートについて書いているそうです。
これは大正5年のことですから、
あるいは日本製のルーズリーフを
想定しているのかも知れません。

それはともかく、
日本最初のルーズリーフ・ノートは
4つ穴であったとのこと。
ということは、
それ以前の外国製ルーズリーフもまた
4つ穴ではなかったでしょうか。
この4穴を基本として省略すれば3穴になり、
どんどんふやしていけば26穴にもなるわけです。
これはもしかすれば
それぞれの国民性と関係があるのではないでしょうか。
日本人は一事が万事、几帳面で、
細かいことが好きなのでしょう。

内田魯庵は一時
「丸善」に関係していたこともありますから、
おそらく販売もし、
使用もしていたのではないでしょうか。
魯庵が4つ穴ルーズリーフ・ノートに向って
いったい何を書いただろう、
と想像するのは楽しいではありませんか。
魯庵とルーズリーフ・ノート
これも私のノートに書きつけておこうと思います。


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