服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第560回
ドレス・ベストの復活作戦

ドレス・ベストを着たことがありますか。
ドレス・ベストは「礼装用チョッキ」のことで、
“イヴニング・ベスト”とも呼ばれるものです。
つまり燕尾服を着る時の、
白い、胸開きの広いチョッキのこと。
たいていは白い蝶ネクタイと同じく、
白ピケ地で仕立てられます。
ピケは、細い畝織地のことです。

少し説明が長くなりましたが、
ある時、偶然に古着屋で
このチョッキを見つけたのです。
もちろん私も燕尾服を着る機会はまずありません。
当然、無用の長物です。
でも値段は安いし、
使えそうな感じだったので、
手に入れました。
さあ、1940年代頃の代物でしょうか。
とにかく古い、白ピケの礼装用チョッキ。
でも、表地も背裏もほとんどコットン。
芯地もほとんど入っていません。
ということは自分で洗えてしまうのです。
少し漂白剤を加えて、洗ってみました。
半乾きのところでアイロンをかけました。
するとほとんど新品のようになったのです。

これはしめた。
よし、うんとカジュアルなベストとして
使ってみようと思ったのです。
デニムのシャツの上に重ねてみる。
ポロシャツの上に重ねてみる。
我ながら悪くない。
少し調子に乗って、ジャケットに合わせてみる。
シャツにタイを結んで、白ピケのチョッキ。
背中に調整用の小さなベルトがあるので、
身体にフィットする。

ただひとつだけ欠点を言えば、
Vゾーンが深いので、
上着の胸開きからはチョッキは見えない。
だけど前ボタンを外せば顔をのぞかせるから、
まあ、良しとしましょう。
とにかく汚れようが汗をかこうが、
自分で洗えるの嬉しい。
ちょうどワイシャツのように糊づけをして、
ピンと襟などを張らせることもできるでしょう。
あるいはわざと洗いざらしを着るのも面白い。

ところでドレス・ベストの前ボタンは、ふつう4個。
3個という場合もあります。
これはすべて留めて着ることになっています。
不要品でも智恵と工夫?で再利用するのは、
なんとも楽しいものです。


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