服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第537回
時にはアイレット・カラーを

アイレット・カラーという名の襟型を知っていますか。
ワイシャツの襟のほぼ中央を、
小さなピンで留める式のデザイン。
ふつう「ピンホール・カラー」と呼ばれることが多いようです。
もともとはイギリスではじまった襟型で、
“アイレット・カラー”の名前で知られています。
ただしアメリカでは
“ピンド・カラー”と呼ぶことが多いようです。
襟のところにあらかじめ小さな穴が開いていて、
ここにピンを通して留める。
当然、ネクタイの結び目の下で、フィットして、
タブ・カラーのような効果があらわれます。

というよりもアイレット・カラーは
タブ・カラーの影響から生まれたものでしょう。
タブ・カラーは20世紀初頭、
英国軍人からはじまったものです。
ちょうどその頃は、
男性のワイシャツがハード・カラーから
ソフト・カラーへ変る時代。
軍人たちは一般人よりも先に、
このソフト・カラーを採用したのです。
でもソフト・カラーに慣れていないものだから、
襟先がはね上がってしまう。
これを「だらしない」として嫌ったものです。
そこでしっかりと襟先を保たせるために、
小さな布と小さなボタンを付けて、これを留めた。
つまりタブ・カラーの誕生です。

このタブ・カラーを一般人が、
もう少し装飾的に行おうとしたのが、
アイレット・カラーなのです。
いつもスプレッド・カラーのシャツばかり着ていると、
時にはアイレット・カラーが
新鮮に思えてくるはずです。
また、ちょっとしたドレス・アップにも
ふさわしいものではないでしょうか。

アイレット・カラーを上手に着こなすには、
ネクタイの結び目に注意すること。
つまりあまり大きな結び目にしたのでは、
襟とのバランスが取れなくなってしまいます。
ちょうど左右の襟の間に、
過不足なく収まるように結びましょう。

ピンド・カラーの代りに、
カラー・バァを使う方式もあります。
これはバネの効いた装飾品で、
同じような効果があります。
カラー・バァではさむだけですから、
穴の開いていない襟にも使えます。


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