服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第535回
おしゃれで、すてきな会食

コンヴィヴィアリテという言葉を知っていますか。
私もついこの間教えてもらったばかりですが。
今では「食事を上手に楽しむこと」
といった意味でつかわれているようです。
コンヴィヴィアリテ“convivialite”は
もちろんフランス語。
もともとは「宴会好き」
という意味あいであったとのことです。

この言葉のもとになった
“コンヴィヴィ”は「会食者」ということ。
ここから「楽しい会食者」「楽しい会食」といったふうに
意味が拡がっていったのでしょう。
そして今では、ほんとうの美食とは
コンヴィヴィアリテにあり、
と言われるまでになっています。

どこの何が旨い、というだけでは
美食の楽しみではないのだ、と。
もちろん店や料理も大切ですが、
それ以上に会食者
だれと一緒に食卓を囲むのか。
もちろん食事がよりいっそう
楽しくなるような人であることが望ましい。
また話題や話し方も重要になってくるでしょう。
このように食事をとりまく総合的な要素を考えて、
さらに食事を楽しくすることが、
コンヴィヴィアリテなのです。

コンヴィヴィアリテはなにも
宴会そのものではありません。
つまり大騒ぎすることとは無関係です。
上品で、しゃれていて、愉快な会食にする、
それがコンヴィヴィアリテなのでしょう。

さて、このように考えると、
いろいろ思い当ることがあります。
まず、極端に食事のマナーが悪い人が、
ひとりでもその中に入っていると、
気になって集中できないことがあります。
自分ではよくても、
まわりの人に気をつかわせてしまうようでは困ります。
また、せっかくの食事なのに、
仕事の話やネガティブな話ばかり
というのも困りますね。
あるいは楽しい話であっても、
自分ひとりで、エンエンと、
大声でしゃべり続ける人があったりします。
これもイヤですね。

―という風に人の欠点はよく分るのですが、
自分ではなかなか分らないものです。
コンヴィヴィアリテとは
自分を見直す良い機会でもあるのです。


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