服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第504回
おしゃれの眼について

骨董通りを知っていますか。
住所で言えば港区南青山。
青山通りから六本木通りに至るまでの道。
紀ノ国屋を背にして骨董通りを歩いて、
やがて富士フィルムのビルを左手に眺めるまでの、
おしゃれな道程。
つい立ち寄ってしまいたくなるブティックやカフェが
並んでいます。

戦後、外人客を相手にした骨董屋が何軒かあったので、
俗に「骨董通り」と呼ばれるようになったそうです。
もちろん私も時折、骨董通りへ行きます。
美味しい和菓子を買いに。
「菊屋」という上品な和菓子屋が一軒あるのを、
ご存じでしょう。
むかしから柳の木が1本あって、これが目印。
小さな店ですが、味と趣味の良さは保証つき。
ここの「瑞雲(ずいうん)」をひと口食べると・・・。
いや、和菓子の話をしようと思ったのではありません。

天使の話。それも黒天使の話。
「菊屋」からもすぐ近いのですが、
“アンジュノワール”というブティックがあります。
フランス語で「黒天使」という意味なのです。
この間、偶然にも立ち寄って、驚いてしまいました。
あまりにも極上品ばかりが並んでいるので。
シャツやスーツ、ネクタイや帽子。
その他、紳士の小道具が並んでいます。
とにかく帽子のリボンが3万8千円というのですから、
私なんぞはただただ見せて頂くだけ。
男のおしゃれ用品、
その極上品だけを揃えた店なのです。
田原桂一さんのプロデュースということで、
パリの工房から特別に取り寄せた品物もあります。
そしてなによりの特徴は、
客の要望によって、
すべて1からオーダーが出来るのです。
値段はけっして安くはありませんが、
世界でたったひとつのものを入手できることを考えれば、
納得できるでしょう。

おそらく骨董通りでもっとも入りにくい店ですが、
入ってみるだけの価値はあります。
男のおしゃれの最高級品がなにであるかを、
教えてくれます。
骨董も、おしゃれも、最初は見ることです。
見ることで眼が養われるからです。
ぜひ一度、“アンジュルノワール”をのぞいて、
おしゃれの眼を高めて下さい。


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