服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第497回
これが世界最強のパンツ

ティン・パンツを穿いたことがありますか。
ティン・パンツ tine pants。
読んで字のごとく「ブリキのパンツ」。
ただし本当にブリキで作っているわけではありません。
まるでブリキのように強くて頑丈なパンツ、
という意味なのです。

丈夫なパンツと言えば、
誰もがすぐにジーンズを思い浮べるでしょう。
でもこのティン・パンツはジーンズよりも、
もっともっと強いのです。
最初、まだ生地が固い頃は、
転んだりすると、
むしろ生地のほうに肌が負けてしまうのではないか、
と思えるほどなのです。

厚手のコットン・ダック(ズック地)が使ってあって、
その縫い方も当然、頑丈。
ちょっとやそっとで
破れるようなことはありません。

ゴールド・ラッシュといえば、
すぐにサンフランシスコを想像しますね。
けれども1897年、
アラスカでも同じように金が発見されたのです。
その金鉱掘りのための作業服として、
ティン・パンツがはじまったのです。
今も、アメリカ、シアトルの、
フィルソンという会社が
このティン・パンツを作っています。
100年以上、同じ会社が、同じパンツを、
同じように作りつづけているのは、
ちょっと珍しいのではないでしょうか。

色は主としてカーキー色で、
穿けば穿くほど、身体になじんできます。
最初は少し固い感じがするかも知れません。
でも慣れてくれば、
ちょうど厚手のチノ・パンツのような感覚で
組合わせることができるでしょう。
ただ、足もとだけはワーク・ブーツのような、
少し重味のある靴のほうがふさわしいかも知れません。

ティン・パンツのなかでも、
さらにダブル(生地が二重になっているもの)があるというから、
驚くではありませんか。
ティン・パンツはごく少量しか輸入されません。
でも「ダヴォス」(TEL:5500-2850)では売っています。
シングルで16000円。ダブルで18000円。
おそらく世界最強のパンツでしょう。


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