第480回
アパッシュ・スカーフ・ストーリー
アパッシュ・スカーフというのを知っていますか。
比較的小型のスカーフで、
たいていは首に軽く巻いて使います。
“アパッシュ”apache はフランス語で
「街の不良」の意味があります。
1920年代頃、パリの、若いチンピラ共が、
派手なスカーフを首に巻いた。
後にこれが一般にも流行となって、
“アパッシュ・スカーフ”と
呼ばれるようになったものです。
今、さり気なくバンダナを首元に結ぶことがあります。
この時のバンダナと、
アパッシュ・スカーフはよく似ています。
もっともバンダナは主としてコットン、
アパッシュ・スカーフはたいていシルク、
という違いがあります。
ただし、むかしのバンダナは絹だったのですが。
では仮に、シルク地のバンダナであったなら、
アパッシュ・スカーフと、
いったいどう違うのか。
なかなか難しい問題であります。
フランス語の“アパッシュ”は
もともと流行語のひとつで、
英語の“アパッチ”Apache を、
そのままフランス読みにしたところから
はじまっています。
「まるでアパッチ族のように乱暴な者」
という意味であったのかも知れません。
ではアパッチ族は乱暴なのか。
いえいえ、そう簡単に決めつけたものではありません。
英語の“アパッチ”はたいへん古い言葉で、
もともとはアリゾナ州北東部の、
ネイティブ・アメリカンが、
ナバホ族を指して使った言葉。
その意味は「敵」。
これはそれぞれの部族が違うのですから、
仕方のないところでしょう。
本来の形は“ア・パーチュ”で、
スペイン語の影響から生まれた言葉であったとのこと。
スペインの探検家、
オニャーテ(1550?〜1630年)が書いた書物にも、
“アパッチ”の言葉が出てくるそうですから、古い。
アパッチでもアパッシュでも、バンダナでも、
とにかく寒い時には首になにか巻きたいものです。
タートル・ネック・スェーターの上から、
あえて巻くというのも、面白いものです。
|