第473回
おしゃれなおしゃれなバンショオ
バンショオを知っていますか。
私もたまにこれを飲むことがあります。
正しくは“バン・ショオ”vin chaud で、
直訳すれば「熱いワイン」。
日本酒に燗酒があるように、ワインを温めて飲む。
日頃、ボルドーの5大シャトー物を
愛飲しているような人にとっては、
腰を抜かす話かも知れません。
でも、ごくふつうのフランス人にとっては、
バンショオは昔からの習慣なのです。
ただし白ワインのバンショオということはなくて、
まず例外なく赤ワインを温める。
彼らは風邪の特効薬、
もしくは風邪予防の特効薬だと信じています。
また、寒い日に身体を温める
ごく身近な方法でもあります。
バンショオにふさわしいのはテーブル・ワインで、
上等のワインはやはり室温で飲むに限ります。
さて、バンショオの造り方は至って簡単。
赤ワインを容器で温めるだけのことですから。
飲み残しのワインを2、3混ぜるなんてことも可能です。
ただし白いホーロー鍋などは
色が移ることがありますから、要注意。
どうも安手の小鍋がふさわしいようです。
それもお燗とは違って、沸騰寸前まで温めて、
フーフーと冷ましながら飲むのが、バンショオ。
マグカップなどで飲むのが良いでしょう。
とにかく身体が温まることは間違いなし。
さて、これだけでも立派なバンショオなのですが、
さらにちょっと手を加えるだけで、
より本格的な飲物になります。
赤ワインを温める時、
クローブの実を数個加える。
香りがさらに豊かに、複雑になってきます。
あるいは飲む寸前に
砂糖やハチミツを加える人もいます。
もちろん好みの問題ですが。
バンショオにレモン・スライスを1、2枚加えるのも、
ほぼ常識になっています。
いや、オレンジ・スライスのほうがいいよ、
という人もいます。
さらにうるさいことを言う人は、
バンショオをシナモン・スティックで
かきまわしながら飲むのが通、といったりします。
それぞれの流儀を語りながら、
それぞれのカップで飲む。
これがバンショオの楽しさなのでしょう。
おやおや身体がポカポカ温まってきました。
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