第427回
日本の心意気 落雁
らくがんはお好きですか。
落ちる雁と書いて、落雁(らくがん)。
和菓子、打菓子の一種。
さまざまな色、さまざまな形がありますが、
食べる前に見ているだけでも
目を楽しませてくれるものです。
原料はみじん粉。
みじん粉はもち米を蒸して乾かし、
それを粉にひいたもの。
このみじん粉に砂糖と水あめを加えて、形を整える。
これを固めて完成。
代表的な日本の干菓子です。
それにしてもどうして落雁なのか。
もともとの原型は古い時代の中国にあって、
軟落甘(なんらっかん)という菓子が伝えられた。
これをもとに日本では
白い粉を原料に四角く固め、
表面に黒ゴマを散らした。
これを田に落ちる雁に見立てたのです。
堅田(かただ)はむかしから
近江八景のひとつとして有名で、
ことに堅田の落雁と言ったものです。
堅田は滋賀県大津市の地名。
当時は茶道の盛んな時代ですから、
菓子の名を堅田の落雁に見立てるとは、
なんと粋なことであろうと
一般化していったのだそうです。
なぜ、落雁の話をはじめたのか。
フランス料理店で落雁を頂いたのです。
八重洲、東京駅に隣接して、
フォー・シーズンズ・ホテルがあり、
このなかに「エキ」という店が入っています。
上質で、繊細なフランス料理を食べさせてくれる店で、
さすがに接客態度が最高。
それはともかく、帰り際に渡されたのが、落雁。
小さな、紅白の落雁で、虎屋製ときていますから
すっかり嬉しくなってしまいました。
最上のフランス料理を食べて、
日本の心を教えられた気持になりました。
来客の折にお茶を出す。
お茶に添えて落雁を出す。
落雁は生ものではありませんから、
生菓子にくらべて扱いが楽ということもあるでしょう。
食べて良し、食べなくても良し。
もし客が食べないようなら、
小さなお土産にしてもらうこともできるでしょう。
フランス人でさえ、落雁に注目してくれるのですから、
日本人ならもっと自在に落雁を使っても
良いのではないでしょうか。
落雁が「ラクガン」として
世界的な菓子となる日も近いのかも知れません。
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