服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第394回
裾口のちょっとした雑学

パンツの裾口に折返しを付けるほうですか、
付けないほうですか。
裾口の折返しはふつう“ターンナップ”
turn−upと言います。
場合によっては“アップ・ターン”と呼ぶこともあります。
俗に「ダブル」、
あるいは「シングル」(折返しなし)とも。

私はどちらかといえば、
スーツに組込まれたパンツには
折返し付きのことが多く、
そうでない単独で穿くパンツには
折返しなしのことが多い。
つまりケース・バイ・ケース。
少なくとも折返し偏愛派ではありません。

というのは世の中には
パンツの裾口に折返しがないのは絶対に許せん、
と考える人もいるからなのです。
チノ・パンツなどには当然としても、
どうかするとジーンズの裾口も
折返さなくては気がすまない。
という人もいるようです。

なにがなんでも折返しを付けたい。
けれども生地との関係で折返しの余裕はない。
そんな場合でも、折返し偏愛派は辛うじて生地を重ねて
さも折返してあるように見せてしまう。
俗に「にせかぶら」と言います。
一見、折返しのようですが、
巧みに生地を重ねてあるだけなのです。
正しくは“フレンチ・ターナップ”の名称があります。
これに対して「本かぶら」はとくに
“パーマネント・ターナップ”と呼ぶことがあります。

でも、なぜそこまで苦労して
折返しを付けようとするのか。
ヨーロッパでは折返し付きのほうが、よりクラシックで、
より正式なデザインだとされるからです。
つまり「シングル」はモダンであり、略式であると。

むかし第二次大戦中、
生地節約のため折返しが禁止されたことがあります。
これがきっかけで戦後になって
「シングル」が流行ったのです。
言い換えれば第二次大戦前は
折返し付きが常識になっていました。
もっともそれも20世紀はじめの流行であったのですが。

洋服屋の専門用語では「マッキン」と言うことがあります。
これはアメリカ、第25代大統領、
ウィリアム・マッキンレー(1843〜1901)に
因んでいるというのですが、
本当のところは私も知りません。


←前回記事へ

2003年10月31日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ