服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第387回
古書展目録のたのしみ

神田に「東京古書会館」というのがあるのを知っていますか。
私も知らないではありませんが、
新しく建て変ったことはまったく知りませんでした。
とんとごぶさたしていたからです。
場所は駿河台交差点近く、
小川町郵便局の隣。(TEL:5280-2288)

東京古書会館ばかりではありませんが、
時折業者が集って古書即売会が開かれます。
たいていは週末で、
店を閉めるにも都合が良いからでしょう。
もちろん客のほうでも有難い。
即売会はほとんど例外なく、
それに先立って目録を作って配布する。
時折、私のところにも目録が送られてきたりします。
でもね、この古書展の目録くらい困るものはありません。

根が嫌いなほうじゃないので、
つい見入ってしまうのです。
あっと気づくと半日が過ぎていたりします。
駄文を書かなくては、と思うのですが
面白くて引込まれてしまう。
もうひとつ、欲しい本があったらどうするんだ。
手の届く値であればともかく、
欲しいけれど買えない場合、2、3日寝られない。
本当に目録は困る。

たとえば10月31日(金)から3日間、
古書展があります。
その目録の一部を眺めてみる。
ブリア・サバラン著『美味札賛』、第2版、全2巻、25万円也。
どうします、こういうのは。
日本語版で読むから結構です、要りません、
と言うべきでしょう。
そもそも私は単なる古本(フルホン)好きなのであって、
古書蒐集家ではない。
まして奇書珍本のたぐいには興味がないのです。
いや、それ以前になにも古本を買うのが目的ではない。
古本がたくさん並んでいる状態を
眺めて歩くのが好きなのです。

それはともかく目録の続き。
渡辺辰五郎 著『裁縫教科書』明治30年刊、6千円。
これならまあ買えないでもない。
私、今、幕末から明治にかけて、
洋服がいかに伝えられ、
いかに定着していったかについて興味があります。
なにかの参考になるのではないかと思ったからです。
でも、この内容が洋裁であるのか
和裁であるかのかで大きく違ってくる。
ああ、またしばらくの間寝られなくなってしまう。


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2003年10月24日(金)

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