服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第317回
半袖シャツの上手な着こなし方

今、ネクタイをしていますか。
私はスーツを着る時には
たいていネクタイを締める。
でも、上着を着ない場合には、ネクタイをしない。
つまりシャツとパンツだけ。
つまり私の頭のなかでは
上着とネクタイとがセットになっているようです。

それはともかく上着を省略して、
シャツとパンツだけで外を歩くのは気持の良いものです。
さて、ネクタイを外すということは、
より気楽に着ることにほかなりません。
当然、シャツの衿元のボタンは外す。
この時、たいていの男はなにか忘れ物をしたような気になる。
タイを外し、ボタンを外し、
少し頼りないような心地がする。
これは長年の習慣がそう思わせてしまうのです。

ひとつの例として、開襟シャツをあげてみましょう。
オープン・カラーのシャツ。
ちょうどパジャマの衿のように、
最初から衿元が開いてるいシャツ。
はじめからタイを結ぶことなど考えていないのですから、
いっそ潔いのではないでしょうか。
少なくともかすかな不安感に
とらわれることはないでしょう。
どうせタイをしないのなら開襟シャツ、
という考え方は大賛成です。

ごくふつうの半袖シャツであっても、
自分なりに衿を変化させることができます。
衿の後を少し立ててみる。
端を2センチほど残して、衿を立てる。
そうすると衿先は左右に大きく拡って、
はっきりとした量感が生まれます。
これも開襟と同じように、
ネクタイをしないことを決意した衿型のひとつでしょう。

結局のところそのシャツが美しいかどうかは、
この決意にかかっているのです。
ネクタイをしたいのだけれど外してしまった、
という中途半端な気持があったのでは、
せっかくのシャツが活きてこないのです。

自分がネクタイを締めた時には、
ネクタイ最高と思う。
逆にタイを外した時には、
なんて気持が良いのだろうと思う。
このようなまるで二重人格でもあるような、
はっきりとした気分の切り替えが、
おしゃれ心の源なのです。


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2003年8月6日(水)

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