服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第309回
私の理想のTシャツ

ジョルジオ・アルマーニを知っていますか。
言うまでもなくイタリアを代表する
ファッション・デザイナーですね。
G・アルマーニは夜寝る時に
Tシャツを着ることが多いとのことです。
アルマーニに限らず、
Tシャツをパジャマ代りにする人は
珍しくないでしょう。
ことに夏の間はそうですね。

真夏の夜の寝間着は何が理想であるのか。
これは難しい問題です。
寝室の条件も違えば、
好みや感じ方がそれぞれ違うからです。
そこで私の好みだけを言えば、麻のパジャマ。
素肌の上に麻のパジャマだけを着て寝る。
これ以上の代物はない、と思えるほどです。
肌ざわりが良く、吸湿性良く、また乾きも早い。
でも、欠点がないわけではありません。
洗濯やアイロンがけのことを考えると、やはり面倒です。
さりとて同じ麻のパジャマを
2日3日と続けて着る気にはとてもなれません。

これはひとつの夢ですが、
麻のTシャツがあったらなあ、と思います。
たとえば白麻のTシャツに白麻のトランクス。
これは麻のパジャマ以上に快適でしょうし、
手入れもはるかに簡単です。
洗濯機でそのつど洗える。
干す時に、シワを伸ばし、形を整えるようにさえすれば、
乾いてからもほとんどアイロンの必要はないでしょう。
現実にコットンのTシャツがあるのなら、
リネンのTシャツだって可能なはずで、
誰か作ってくれませんか。
それともこの広い世の中には
もうすでにどこかにあるのでしょうか。
もしそうなら、ぜひ教えて下さい。

さて、とりあえずの妥協点は、Tシャツとトランクス。
少し上等のTシャツ。
より細かい、上質糸を使ったTシャツ。
値段も多少高いのですが、
一見して生地に光沢があるのですぐに分ります。
そしてトランクスは白いコットンかリネンのものを合わせる。

新しい、上等のTシャツであれば、
私はまず最初に、夏の外出着として着る。
一度洗濯した後で、パジャマ代り。
ひと夏着たなら、まくらカバー代りとなり、
雑巾となり、靴みがきとなり、
良いTシャツの一生は実に長いのです。


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2003年7月29日(火)

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