| 第197回美しいコーヒーの飲み方
 一日に何杯のコーヒーを飲みますか。3杯、5杯、7杯。
 もっともこの場合の「コーヒー」がどんな種類であるのかも、
 考慮に入れておくべきでしょうが。
 コーヒーにも大きく分けて、二種類があると思います。エスプレッソをはじめとする西洋風のコーヒーと、
 昔ながらのドリップで落とす式の「珈琲」と。
 私は食後には“コーヒー”を飲みますし、
 昼間の楽しみとしては「珈琲」が好きです。
 要するにコーヒーならなんでも飲みます。
 が、これからの話は主として「珈琲」を想定しての話です。
 コーヒーをどこで飲むか。人さまの家でごちそうになる、あるいは喫茶店で飲む。
 いずれにしてもコーヒーが目の前に置かれたなら、
 すぐに飲むことにしています。
 一般に紅茶とコーヒーを較べれば、
 コーヒーのほうが温度が低い。すぐに飲める。
 ほんとうは猫舌なので、口を焼きそうになることもある。それでも一応口をつけて、飲んだふりをする。
 これはせっかくおいしく淹れてくれた人に対する
 礼儀だと思うからです。
 話に夢中になって、しばらく経ってから、飲む。
 これでは「温度が低い」などと文句をつける資格はありません。
 コーヒーが来たら、すぐに右手でカップを持って、口に近づける。これが美しいしぐさです。
 最初のひと口は砂糖もミルクも入れない。
 ブラック・コーヒーを味わってから、次に砂糖を加える。
 でも、かきまぜたりはしない。
 何度か飲んでいるうちに、ゆらゆらとコーヒーは揺れて、
 自然に砂糖がとけはじめる。
 だんだん、旨味が変化し、おいしくなってくる。
 残り1/4位になったところで、ミルクを加え、
 もうほとんどデザート状態になったのを口に入れて、締めくくる。
 ―こんなコーヒーの飲み方は邪道かも知れませんが、私は好きなのです。
 つまりコーヒー1杯飲むにも
 スタイルと美しさがある、と言いたいのです。
 少なくとも自分のスタイルを持とうではありませんか。
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