| 第183回正しい姿勢と美しい食事
 食事のとき、フォークをどのように口に運ぶか、考えたことがありますか。
 私はことさらにテーブル・マナーを
 難しく考えようとしているわけではありません。
 第一、私自身、テーブル・マナーについて
 自信を持っているほうではないのです。
 もっと基本的な話だと考えて下さい。
 口をフォークのほうに持ってゆくのではなく、フォークを口のほうに持ってゆくべきだと思います。
 「なんとまあ、お前は当り前のことを言うか」
 と驚く人もいるでしょう。
 しかし世の中には必ずしもそうではない人がいるのです。
 ごく自然に口が、ということは
 頭がフォークのほうに動いてしまう。
 そうすると当然、背中が丸くなり、
 姿勢が悪くなってしまいます。
 つまりテーブル・マナー以前に、
 たいへん下品な食事姿勢になってしまうのです。
 きちんと正しく椅子に座り、姿勢を崩さないようにして、フォークを口に運びましょう。
 でも、実際にはそうはいかない。
 が、少なくともそうである自分を
 イメージしながら食事をしましょう。
 口をフォークに運ぶのではなく、フォークを口に運ぶ。これは食事中のあらゆることに応用できることなのです。
 スプーンを口に運ぶ。箸を口に運ぶ。
 グラスを口に運ぶ。指先を口に運ぶ。
 たとえばカナッペ類を食べる時には、
 指を口に運ぶというのが正しい作法になります。
 食べ物ばかりではなく、飲物についてもまったく同じことです。
 日本酒を飲むときの盃を考えてみましょう。
 口を盃に近づけるのは、下品になります。
 盃を口に近づけるのは上品で、
 側で見ていても気持が良いものです。
 たとえ水一杯飲むのでも、グラスを口に近づけるという原則(?)を実行すれば、
 かなり美しい姿勢が保てるでしょう。
 ビールやワインの場合でもまったく同じことです。
 少なくともテーブル上の皿に顔を近づけるような悪い姿勢だけは、
 絶対に避けるべきです。
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