服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第152回
スェーター着こなしの「字あまり」

なぜスェーターに
ゴム編みが付いているか知っていますか。
袖口や裾口、あるいは場合によっては首まわりにも
ゴム編みがあしらわれることもあります。

畝(うね)のような編み方があるところから、
リブ・ニットとも呼ばれることはご存じでしょう。
リブ・ニット(ゴム編み)はふつうの編み方に較べて、
より伸縮性が高いことです。
優れた伸縮性があるために、
手首や裾口でぴったりとフィットし、
風が入ってくることもなければ、
着こなしの上でもなにかと都合がよいわけです。

もしスェーターにゴム編みがなかったなら、
かなり着こなしが難しいものとなってくるでしょう。
せっかく付いているゴム編みですから、
上手に使おうではありませんか。

ごく一般的なスェーターの場合、
必ず左右の手を真横に、水平に伸ばすことをおすすめします。
背筋を伸ばし、はっきりと両手を横に伸ばします。
こうすると自然にスェーターの裾口が上に上ってきます。
でも、この上に上った位置が、
スェーターの正しいウエスト位置なのです。

さて、スェーターのウエスト・ラインが決ったところで
手を元に戻す。
と、ウエスト部分にふくらみが生まれる。
この余裕、ふくらみが“ブラウジング”なのです。
スェーターを上手に着こなす上で重要な細部なのです。
“ブラウジング”があるためにスェーターに
表情とシルエットが生まれます。
と同時に、多少身体を動かしても
シルエットが崩れにくいという利点もあるでしょう。
俳句などで言う「字あまり」のようなものかも知れません。

この“ブラウジング”をより効果的に行うにも
ゴム編み部分がしっかりとしている必要があります。
購入時には念入りに点検することをおすすめします。

“ブラウジング”はなにもウエストだけでなく、
手首にも当然あります。
手首ではフィットし、その上にふくらみが生まれるのは、
実に美しいものです。


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2003年2月22日(土)

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