服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第145回
スェーター上手への近道

カウチン・スェーターというのを知っていますか。
太い羊毛糸を使って手編みのスェーター。
オフ・ホワイトや淡いグレーの地に、
鳥や動物のパターンを編み柄として表現しているのが特徴です。

「カウチン」Cowichan 正しくは“カウイチャン”で、
カナダはブリティッシュ・コロンビア州、
バンクーバー島に住むサリッシュ系インディアンのこと。
単に“インディアン・スェーター”とか
“サイワッシュ・スェーター”と呼ぶこともあります。
“サイワッシュ”Siwash は「インディアン」の意味です。

カウチン・スェーターもかなり古くから、
自分たちの民族衣裳のひとつとして編まれていたものでしょう。
そしてそのもうひとつの特徴は
多くのフィッシャーマンズ・スェーター同様、
未脱脂羊毛が使われることです。
つまりより原毛に近いウール・ヤーンを使って編む。
天然にそなわった油脂分を含むため、
より丈夫で、水をはじく性質を持っているのです。

カウチン・スェーターは洗うべきではない、と言われるのも
未脱脂ウールだからなのです。
洗濯によって天然の油脂分がそこなわれる可能性があります。
カウチン・スェーターを10年20年と上手に着つづけると、
編地というよりはむしろ糸がからみ合って
一枚の毛布のような表面感になります。
いっそう密度が増して、
ほとんど風を通さないスェーターが完成するでしょう。

より完璧なスェーターに仕上げるために
10年着つづけるのも大変ですが、
つまりそれほど丈夫なスェーターでもあるのです。
キャンプなどのアウト・ドアを楽しむには
最適のスェーターでしょう。
合わせるパンツはコール天などがぴったりです。

カウチン・スェーターをはじめ、
ひと言で説明できる、典型的なスェーターから入ってゆくのも、
スェーター上手への近道なのです。


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2003年2月15日(土)

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