服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第143回
アラン・スェーターを着こなしてみよう

アラン・スェーターを着たことがありますか。
代表的なフィッシャーマンズ・スェーターで、
複雑な編目が表現されているのが特徴。
たしかに色はナチュラル・カラーがほとんどですが、
その編み柄は実に多彩なのです。
つまりアラン・スェーターは
編み柄の面白さを愉しむスェーターである、
とも言えるでしょう。

アラン・スェーターにもっともよく見られるのは、
ケーブル・ステッチ(縄編み)。
これは漁師たちの使うロープや
漁網をあらわしたものと言われています。

ケーブル・ステッチと同じくらいに特徴的であるのが
“ボブル”bobbleです。
ボブルは「小玉」の意味で、
文字通り小さな玉のような編み方のこと。
これはアラン島の小石の象徴だと考えられています。

この“ボブル”とよく組合わされるものに、
“ウエイブ”があります。
これは波のうねりを表現したもので、
漁師にとってごく身近なパターンであったことは
言うまでもないでしょう。

“ウエイブ”をもっと大きく、
直線にしたものが“ジグザグ”。
これはアラン島の坂道をモチーフにしたものでしょう。
あるいは“トゥリー・オブ・ライフ”という柄もあります。
木の形をタテに並べたような編み方で、
天国につながる道を意味しているとのことです。

まだ他にもありますが、
これらの柄をそれぞれに組合わせて
無数の編み方が存在するわけです。
むかしは一家に一柄で、どの柄はどの家の人間であるか、
すぐに分ったのでしょう。
これは不幸な海難事故の際にも、
身元確認に役立ったのです。

アラン・スェーターにフラノのパンツを合わせる。
あるいはコール天のパンツを組合わせる。
もうそれだけで完成で、他になにもいらない。
つまりそれほどに温かく、
個性の強いスェーターなのです。


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2003年2月13日(木)

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