服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第133回
本当の手袋の扱い方

手袋の脱ぎ方を知っていますか。
実は手袋にもちゃんとした
脱ぎ方というものがあります。
寒い戸外を長時間歩くような場合、
手袋は必要不可欠でしょう。

手袋をしていないと、
どうしてもポケットに手を入れたくなる。
ポケットに手を入れると背中が丸くなる。
背中が丸くなると格好が悪くなる。
―そんなわけで胸を張って、
美しく歩くためにも手袋は必要なのです。
そこで正しい手袋の扱い方を知っておくべきです。

ふつう手袋を脱ぐ時、
指先部分をひっぱろうとします。
が、これは正しいやり方ではありません。
手袋はたいてい薄い革で、
薄い革はひっぱっているうちに伸びてしまいます。
第一、本当に上質の、本当にぴったりフィットした手袋は、
ひっぱったくらいでは脱げないものです。

しかも本当に良い手袋の条件は
常にぴったりとフィットしていることにあります。
それは単に格好が良いというだけでなく、実際に温かい。
少しでも隙間があると、それほど温かくはないからです。

つまり本物の手袋とつきあうためには
正しい脱ぎ方をわきまえていなくてはならない、
ということになります。
さて、脱ぎ方。
これは剥(む)くのです。
ちょうどバナナの皮を剥(む)くように。
手袋はまず例外なくスリットが入っていますから、
このスリットを利用して、
くるりと裏返しにするように、剥(は)ぐ。

右も左も同じように半分ほど裏返しになったところで、
静かに、ゆっくりと手を揉(も)みます。
ちょうど手を洗うときのようなしぐさをするのです。
こうすると簡単に手から外れます。
こうすればどんなにぴったりとした、
手にくい込むような手袋であっても、
まったくひっぱることなく、
脱ぐことができるのです。
革物の手袋を上手に扱うには
ぜひとも知っておきたいことです。

嵌(は)める時は、以上の逆。
半分ほど折り返すようにしてから、
指を嵌(は)めて、下を元に戻す。


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2003年2月3日(月)

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