服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第99回
着物とかばん

「印伝」(いんでん)という言葉を聞いたことがありますか。
正しくは印伝革という革の一種なのです。
今では「甲州印伝」として知られ、
山梨で多く作られるとのことです。

印伝革の材質は鹿革で、
まず染色し、漆で模様づけをして仕上げられます。
印伝革の歴史は想像以上に古く、
戦国時代には鎧の一部などにも使われることがあったようです。
でも、さらに古くはインド起源で、インドから伝えられた。
そこで来であるところから、
印伝と呼ばれるようになったのです。

印伝革は革素材ですから、実にさまざまなものが作られます。
そしてそのひとつに袋物があり、
これが和装用かばんとして最適なのです。
直線状の袋で、口に紐が通してあり、
なかに物を入れて口紐をしばると、
軽いハンドバッグとして使える。
色、柄、デザインなどは数多くありますから、
好みに合わせて選ぶと良いでしょう。

実際、着物を着ると困るのはポケットがないことです。
それでもむかしの男たちは袂(たもと)や懐(ふところ)を
上手に利用してポケット代りとした。
でも今われわれがその真似をしてもなかなかうまくいかない。
どうしても着くずれしてしまう。
やはり和装用ハンドバッグを
上手に利用したほうが良いでしょう。

いつかこのコラムでも紹介したことですが、着物を着て、
白足袋を履いたときには、替えの白足袋を用意しておきたい。
では、その白足袋をどこに入れておくのか。
まさか着物を着てブリーフ・ケース
というわけにもいかないでしょう。

そんなときの強い味方が印伝革の袋物なのです。
歴史と伝統がそうさせるのか、
着物に印伝、実によく似合ってくれます。
ぜひ一度、印伝革を眺めて下さい。
もちろん袋物だけでなく、財布をはじめ名刺入れ、
小銭入れ・・・数多く揃っています。

印伝革は思ったより丈夫です。
しかも使えば使うほど味わいが深まってゆくのも特徴です。


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2002年12月31日(火)

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