第69回
ドレスシャツの襟には秘密がある
正しい礼装用シャツを知っていますか。
たとえばタキシードを着る場合、
その下にどんなドレス・シャツを組合わせるべきなのか。
原則として白無地のシャツで、袖口はダール・カフス、
胸元には飾りボタンを留めることになっています。
そしてこれも原則ですが、
カフス・ボタンと飾りボタンは同じデザインで揃える。
ついでながら「飾りボタン」は
正しくは”スタッド” stud と言います。
胸元にプリーツをあしらったデザインもあります。
これは細かく数が多いほど上品だということになっています。
しかしもっとも正式なドレス・シャツは俗に「イカ胸」といって、
”U”字型に切替えたシンプルな胸元を
固く糊づけしたデザインなのです。
ところで最大の問題点はウイング・カラーにするか
ダブル・カラーにするか、ということです。
ウイング・カラーは「立折(たちお)れ襟」
襟の元が三角形に尖った襟のこと。
一方、ダブル・カラーは「折襟」、
つまりごく一般のワイシャツの襟型と同じものです。
かなり正式なパーティーでも、
立折れ襟もあれば折襟もあるというのが現状です。
いったいどちらを選ぶべきなのでしょうか。
歴史的にはウイング・カラーのほうが古く、
その意味でもウイング・カラーより正式である、
ということにもなります。
しかし昔は主として燕尾服(イヴニング・コート)に
組合わせたものです。
ひと言で表現すれば燕尾服を
簡略にしたものがタキシードなのですから、
略装にウイング・カラーを着ることもあるまい、
と考える人もいるわけです。
つまりタキシードにあえてダブル・カラーを着るということは、
心の中で「燕尾服ならウイング・カラーだけど」
という思いがあるのかも知れません。
でも貴族の家系でもなく、
むかし燕尾服を着なれていたわけでもない我われとしては、
結局のところウイング・カラーでもダブル・カラーでも
自由に選べるのです。
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