第71回
嵐に会えば避難港へ
中国の黒字はまだまだ増加する見通しです。
かっての日本が1ドル360円の固定レートで
黒字を累積していった時のような事が中国では起こっています。
中国の通貨である元は
世銀の試算では購買力平価で考えたレートの五分の一に
なっています。
1983年で1ドル約2元、ここ数年は8.28元付近ですから
20年で四分の一以上に安くなっています。
外貨準備高はまだ日本には追いつきませんが、世界第2位です。
みんながいっぱいドルを稼いでも、中国国内ではドルは使えず、
外国企業が持てる外貨の量も限られています。
企業がドルを稼げば、その分だけ元を発行し、
元がどんどん街にでて行けばインフレになりかねませんから
中国国債を発行して貨幣の流通量を一定にしています。
中国の温家宝首相は、
現在のほぼ固定と考えてもよい為替レートを
見直す考えはないと語っています。
もし元を安くすると、現在はなんとか走っている中国経済が
変調をきたす恐れがあるからだろうと推測されます。
不良債権問題や都市部と内陸部の所得格差、
非効率な国営企業の淘汰などを
一機に進めていこうとする中国に取って、
輸出のハードルとなる元安は避けたいのでしょう。
失業率の増大などで社会問題となる可能性があります。
しかし、このまま行けば米中の貿易不均衡問題が
進むだけですからどこかで修正の動きがでるのでしょう。
一般には中国元よりドルのほうが
ずっと安全な通貨と思われていますが
万一、信任で成り立っている「ドルの船」がこけた時には
元が割安なゆえに避難港になりそうです。
みんなが安全と思う乗り物と危険と思う乗り物が
逆転するのです。
ドルはいろいろな国に影響を及ぼしますが、
中国はまだまだ内需に依存した経済です。
元は中国が適正と考える水準に為替を変えるだけで
軽い傷を負う程度で乗り越えられるようにも思えます。
中国という避難港は、円貨を持っていくだけでは入港できません。
どう工夫をするか、また避難港は本当にここだけなのか
知恵を絞る必要があります。
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