第51回
国策に売りなし
株式投資にまつわる格言、
「国策に売りなし」を聞かれたことがあるでしょう。
国策に沿った産業であれば政府がついているのだから
発展することに間違いはないだろうといった意味です。
この場合、国が力を入れる分、利益にも近いのですが
それだけ市場経済の仕組みからは遠ざかります。
ここで考えられるリスクを点検しておきましょう。
1.政治と関係が深すぎるリスク
縁故主義がはびこるアジアでは、政治に近いということは、
政権交代によって利権がなくなる可能性もある
ということになります。
大統領や首相、政府高官と近い企業だというアピールは
企業の競争力それ自体では他社に負けるのかもしれないと
考える必要もあります。
フィリピンでは有名なアヤラコーポレーション(AC) や
アヤラランド(ALI)の大株主である
アヤラ一族は時の権力者と一定の距離を保つことによって、
政権交代の不利益から身を守っています。
2.投資家に報いる可能性
インフラ整備や公共事業に近いものは利益も多いのでしょうが、
どの程度の株主還元が可能でしょう。
株価が数倍になる程度や、
銀行預金より良い程度の配当なら可能かも知れません。
が、何十倍、何百倍にも株主の資産を増やせるような
うまい話を胴元の国家が許容してくれるかは
ちょっと疑問に思うところもあります。
(国家が大株主であればコバンザメ的に成功するかもしれません)
選挙民の見ているなかで
公共事業で株主が多大な利益を得れば、
利益を還元すべきと圧力もあるでしょう。
日本でも1976年にジェット機の購入に
多額の賄賂が流れるような事件が起こりました。
各国の歴史を見ても
フィリピン・インドネシアを始め政治の周辺は不明朗です。
「国策は市場経済を歪める場合がある」という
考えも考慮に入れながら産業を検討していきましょう。
「政府から距離を置き、かつ国策に沿った産業」は興味深いです。
参考:アヤラコーポレーション社のホームページのアドレス
(http://www.ayala-group.com)
アヤラランド社のホームページのアドレス
(http://www.ayalaland.com.ph)
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