去り際の美学
第74回 トイレ掃除で金運をつかんだ福富太郎
”キャバレー王”の異名をとる福富太郎さんが、 どうして二十代でキャバレーの店長を任せられたか について聞いたことがあります。
もともとはボーイの一人にすぎなかったのが、 あっという間に店長になったのは、 福富さんに言わせると、 「トイレ掃除のような、 人のイヤがる仕事をすすんでやるように心がけていた」 からだそうです。
キャバレーはお客様商売です。 トイレなどを汚したままにしておくことは、 いちばんのタブーです。
しかし、トイレ掃除は誰もすすんでやろうとはしない。 ときには大便が詰まってしまうようなこともあります。 すると、ますます掃除をしたくない。
ところが福富さんは農家の出身だったので、 肥桶をかついだこともあるし、 糞尿に対して汚いという感覚があまりありません。
あるとき、浄化槽があふれてみんなが困っていたところ、 福富さんはさっと中にはいって、 それこそ体中をクソだらけにしながら、きれいにしたといいます。 その姿をオーナーが見ていて、 「こいつはなかなかやるわい」と思って、 若い福富さんにお店を任せたのです。
2013年6月16日(日)