死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第70回
将来のお金をアテにした借金は身を滅ぼす

借金とひとロに言っても、
生活のためのモノもあれば、事業上の借金もあります。

失業したり、病気になったために、
生活費が足りなくなり、一時的に人から借金する。

また、金銭面にルーズなため、
あるいはほしいものを買いたいために借金する。

たとえば、子どもがピアノをほしがっているとか
外国旅行へ行きたがっているのに、
親に甲斐性がないから希望をかなえてやれない
と言われないために、つい借金をしてしまう。

また、財産づくりのための借金もあります。
土地を買ったり、自分の家を建てるための借金です。

さらに、事業を始めるための借金もあります。
失業したために借金するというのは、
最近ではあまり見られなくなりました。
失業しても保険がおりますから、生活に困ることはない。

その代わりに、お金にだらしのないやつが、
返すアテもないのに、未来の収入をカタにして、
お金を借りるケースが多くなってきました。

サラリーローンなどは、
結果的にはお金にルーズな人ばかりに貸すことになり、
負債をかかえ込むという事態を招いていますが、
将来にはいるお金を見こして
お金を貸すという意味では、銀行も同じです。

カード会社も同じで、
子どもの学費を一時的に立て替えたり、
ピアノ代金を一度に払えない場合、
十回とか、2年払いにするといったシステムを導入しています。
ですから、最近はお金を借りて生活する人がふえています。

簡単にお金が借りられるので、お金にルーズな人たちは、
たちまち借金地獄に落ちてしまいます。

お金にルーズな人たちは、お金を返済できる、
できないと考えるよりも、
目先のお金が手にはいればそれでいい
という考えがありますから、
返済期日のことはあまり気にしません。

そういう人たちを利用して、サラリーローン業者が、
債権者のカードを悪用したりするようなことが起こるのです。





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2013年6月12日(水)

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