第44回
懐の中味がいくらか、他人にわかるようなお金の使い方はするな
貯金ぐらいでしたら、
給料から天引きしてもらえばできないこともありませんが、
何か事業をやるとなったら、
従業員がひどい目に合います。
給料日にお金がなくなったら、
社員全員がラーメンか立食いそばを食うことになりかねません。
人の上に立って事業をするには、
やっぱり自分を訓練して、
気ままさを克服できないといけないんです。
それができない人は、銀行とつき合ったりすると、
てきめんに欠点が露見してくる。
銀行が、お金を貸していちばん心配するのは、
約束どおり返してくれるかどうかということなんです。
かりに五百万円借りて、それを五十回に分けて、
毎月、決まった日に十万円と利息分を払う約束をしたのち、
きちんとそれに対応するだけの準備ができていなかったら、
とても返せない。
相手だって人を見ますから、
そういう人にはおそらくお金を貸してはくれないでしょう。
逆に、この人は経済観念がしっかりしていて、
約束を守る人だとわかれば、銀行はお金を貸すんです。
たとえば、毎月、晦日になると、
かならず五万積み立てて、三年間つづける。
銀行は、こんな人なら大丈夫と信用するんです。
何力月かに一ぺん、
不定期的に百万円とか二百万円とか預金する人よりも、
額はすこしでも、
きちんと積み立てていく人のほうを信用するんです。
それができるような人は、
もともと月給日前に、スッテンテンになるわけがないんです。
世の中には、そういう人が少ないから、
月給日前になると、
そば屋やラーメン屋さんが繁昌するんですね。
私は商家に育ちましたが、
私たち兄弟は、いつも母親からこう言い含められて育ちました。
「懐にいまお金がいくらあるか、
他人さまにすぐわかってしまうような
お金の使い方をしてはいけませんよ」
私の兄弟は一人もサラリーマンにならなかったんですが、
後年、サラリーマンの人たちを見ていると、
なるほどなあと思ったものです。
私の見るところ、
お金の配分が下手な人は、時間の配分も下手です。
自分の持ち時間はちゃんとわかっているのですから、
それをいかにうまく使うか、
配分の観念さえしっかりしていれば簡単にできるのに、
それができない人が多いんです。
よく、会社にもいるでしょう。
やけに忙しそうな顔をして仕事をしているんですが、
前の日は徹夜マージャンをしている。
前々から片づけておけばなんでもない仕事を、
期限まぎわになって、あわててやるような人は、
まず、お金は貯まらんでしょう。
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