“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第724回
総集編6 料理と日本酒の相性が新しい味の魅力を生む

現在、たいていの和食店や居酒屋は、
料理に合わせて日本酒の銘柄を変える、
という相性の工夫をしていない。
ワインでは相性が体系化されているが、
日本酒はその試みすら僅かにしか見られない。

これは、拙著「世界一旨い日本酒」でも指摘したことだが、
日本酒が逆にどの料理とも、
そこそこ合ってしまうことが災いしたともいえる。
また、せっかく旨い料理を出す料理屋でも、
「自分の繊細な料理には、それを邪魔しない酒でないと駄目」
と思い込んでいる料理人が極めて多い。
それで、淡麗辛口の酒や、
大手の安酒しか出さないことになる。

日本酒を売り物にしよう
という意識を持っている料理屋もあるが、
たいていの店は有名銘柄中心の品揃えが関の山。
仕入先の酒屋のいいなりになっている店がほとんどだ。
本当に自分で味を見て、
銘柄を選定する工夫努力が不足している。
これは、また、色々なグルメ雑誌の日本酒の取り上げ方が、
まだ流行に流されている傾向が強いことにもよる。
しかし、ほんの僅かな店は、
料理と日本酒の相性を追求して、
料理ごとに銘柄を変えて進めてくれるようになった。
そういう店は個性豊かないい造りの純米酒を置いてあり、
それを燗にしてくれる。
このような店がもっと認知されて、広がって欲しいものだ。

料理と日本酒の相性が新しい美食の世界を生むこと。
これを日本酒業界が利用しない手はない。
しかし、日本酒と料理の相性は一般的な体系化は結構難しい。
ワインのような分かりやすい公式で表現しずらい理由がある。
ワインであれば、産地、葡萄の品種、作り手などで、
ある程度体系的に料理との相性が整理されている。
しかし、日本酒は産地といっても、
原料の米は流通でどうにでもなるので、
蔵の場所が明確な個性を生み出しているわけではない。
また、杜氏の流派による造りの違いはあるものの、
それより蔵の思想と杜氏自身の腕による個性のほうが強くでる。
原料米の品種による違いもあるが、
それでも、作り手の個性の違いのほうが差は大きい。

ということで、
日本酒と料理の相性を消費者にまで広めるには、
「それぞれの銘柄ごとの料理との相性を試行錯誤で確かめる」
という大変な作業が必要と考えられる。
体系化の道は厳しいように見える。
しかし、日本酒と料理の相性を体系化する切り口はある。
それは、日本酒の酸の性質。
この酸による、切れ、骨格、柔らかさなどの個性が
料理の香味とどのように溶け合うかということが、
相性のよさのひとつの目安となる。
この日本酒の酸の性質と料理の相性については、
さらに定量的な分析と
官能評価を結びつける研究を行うべきである。
日本醸造協会など
日本酒業界の団体が興味を持っていただければ、
手助けをぜひしたいと考えている。


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2007年6月28日(木)

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