“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第614回
いい醤油を造れば農業の発展につながる

松本さんは、
再仕込み醤油を「初雁醤油」と命名し
松本醤油の主力製品と位置づける。
価格は現在で1リッターが660円と、
通常の醤油よりは随分高い。
それまでの得意先は離れていった。
松本さんは、
どう醤油を売るかという営業に頭を悩ませることになる。
自然食品団体からのオファーも徐々にあったが、
彼らは完全無農薬大豆を使うことを強いるなど、
意見の合わないものがほとんどだった。

松本さんは、
将来は川越地区の大豆を全て使って醤油を仕込みたい
という理想を持っていた。
川越という地区は、江戸への基点、
商品の集積地として発展してきた。
醤油屋も昔は多かったが、いまでは松本醤油だけとなっている。
大豆も地元産で醤油を造れてこそ、
伝統を将来につなげることができる。
それには、完全無農薬というのは無理。
農薬は指定許容量を越えない範囲で大豆を作ってもらう。
地元を優先にして
日本の農業を守っていきたいという思いがあった。

そんなある日、やっと付き合いできそうな団体が現れた。
有機・低農薬野菜と無添加食品の宅配グループの
「ラディッシュボーヤ」だ。
日本の農業を守りたい、
国産大豆でできるだけ農薬を減らす努力をしてもらう、
という考え方を聞いて、
これなら一緒にやっていけると松本さんは安心した。
それから、初雁醤油はだんだんと口コミで広まっていった。
お宅の醤油でないと駄目だという消費者も段々と増えていく。
いい醤油を仕込むことの価値が認められた。

松本さんは、今後の松本醤油は醸造に生きるしかない、
という観点から、秩父の味噌醸造所に味噌の製造を委託し、
川越の廃業となった日本酒醸造蔵を復活させた。
地域で連携しながら、総合的に醸造にかかわりたいという。


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2007年1月11日(木)

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