“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第612回
熟成日本酒は神の味

高田馬場「真菜板」のカウンターにならんだ熟成日本酒。
私が持っていった大七、神亀、鷹勇の他に、
神亀ひこ孫純米吟醸の1987年頃醸造のものが
1升瓶でどんと置いてある。
知人がある酒屋で古酒の状態で仕入れて、
さらに寝かしておいたもので、なんと18年古酒になる。
そして、吟醸酒好きの友人が持ってきたのは、
南部美人大吟醸の18年自家熟成もの。

どの順番に飲むかをまず議論。
真菜板店主の杉田さんの案に従って、
鷹勇からグラスに注いでいく。最初は常温で確認。
鷹勇「特別純米酒」12年古酒は、
最初は硬く、熟成香と味のバランスが微妙にずれている。
そして次が神亀ひこ孫13年古酒。
骨太の神亀のどしっとした味わいが口の中に押し寄せてくる。
大七10年古酒は柔らかい熟成味。
神亀ひこ孫純米吟醸18年古酒は、綺麗に枯れた味。
南部美人は18年経っても、まだカプロン酸の香りが残っていて、
びっくり。

そうしているうちに、2巡目に突入。
「んー、変わっている」と誰かがつぶやく。
確かに、さきほどの硬さはとれて、
味と香りのバランスがよくなってきている。
熟成日本酒もビンテージワインと同様で、
最初は開いていないのだ。
それが、口開けをして空気に触れて徐々に味がでてきている。
他の銘柄もどんどんよくなってきている。
特に開き方の目覚しかったのは、大七10年古酒。
生もと造りのおかげか、
優しいバランスのとれた味わいと香りに一同驚嘆した。
これは、以前の大七の伊藤杜氏を
造りの頂点においた時代の酒だからで、
今日の上品さ、洗練さを増した大七を10年寝かせても、
これと同じことになることはないだろう。
神亀はひこ孫13年古酒も、ひこ孫純米吟醸18年古酒も、
とても綺麗に枯れているなかで、
骨太の味わいがぐっと押してきて、とても旨くなってきた。

これらの熟成日本酒を燗にすると、まさに至福のとき。
それに、カラスミ、皮クジラ、親子丼などを酒肴にすると、
料理の美味しさが引き立ってくる。
熟成日本酒の素晴らしさをあらためて認識した夜だった。


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2007年1月9日(火)

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