“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第582回
極上の食材を最大に活かすアイディア

八角は面白い魚で、皮が厚く、グロテスク。
だが、よく見ると龍のような愛嬌のある顔をしている。
断面が八角形をしているので、八角の名前がついている。
この八角は、上品な脂が乗り、大変旨い魚。
鯛や平目に並ぶのではないかと思っているが、存外安い。
そして、関東ではほとんど見ない。
これは多分、小さい魚体を捌くにも、
トゲのある厚い皮を剥くのが大変で手間がかかる。
そのため、料理人が使いたがらず、
あまり人気が出ないためだろう。
今回も3尾で千円という価格で15尾仕入れることができた。

さて、この八角を何匹も捌くからには、
それを単純な刺身だけで出すのはもったいない。
焼き魚も皮が厚いので蒸焼き状態になってとても美味。
最初は刺身と、一夜干しの焼き魚を提供しようかとも思ったが、
さらにいいアイディアを思いついた。
まず、最初は普通の刺身にする。
そして、その間にアラで出汁をとっておく。
この出汁で次にシャブシャブ鍋。
つまり、ただの昆布出汁ではなく、
八角の旨みが凝縮したスープを作っておいて、
そこに八角の身をシャブシャブ洗ってから食する。
味が逃げないどころか、旨みがさらに加わることになる。

シャブシャブを終えたあとで、
その汁に醤油と味醂で味を調えて、
そこに豆腐を入れて湯豆腐をする。
豆腐が八角の旨みを吸い取り、絶品の味わいとなる。
そして、最後にその残った汁で蕎麦雑炊を。
蕎麦の実は粘り気のないさらっとした食感。
口が洗われて、八角の新たな旨みが戻ってくる。
このアイディアは大当たり。
口の奢っている参加者全員が絶賛してくれた。
刺身でも、とても美味しい八角が、
火を通すことによって味が様変わりし、
さらにスープの美味しさがたまらない。
同じ食材の味を基本にはしているのだが、
調理の形態が変わることによって、飽きることもない。
存分に八角の美味しさを愉しむことができるというわけだ。

しかし、たった一つ誤算があった。
それは、開催当日は夕方まで大学の仕事があったので、
渋谷の会場に到着したのが午後6時近く。
それから八角15尾を一人で捌くのに時間が掛かってしまった。
宴会スタートが約束の午後7時を大幅に遅らして、
8時半頃になってしまい、終わったのは深夜の午前1時過ぎ。
どうにか料理全てを愉しんでもらうことができたが、
次回は、昼から準備ができる日取りにすることに決意した。
他の料理も大好評だった。
それらは、明日また紹介したい。


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2006年11月21日(火)

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