“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第553回
徳島で至福の懐石コースがスタート

岩本さんの最初の料理は、「鮑」。
スライスしてあり、蓼酢でいただく。
ちょっと湯引きしてあるのか、
甘みとコリコリとした食感を併せ持っている。
そこに、「鮑の肝」をちょっと炙ったものが添えられ
ツマは「糸瓜」。
肝の香ばしさが口のなかにひろがり、
日本酒「おでんでん」の燗のふくらみがそれを支える。

最初からしみじみとした味わいに出会う。
口開けは、インパクトのある料理を演出する料理人が多いが
岩本さんは一貫している。
決して派手さを好まない。
それが、食べ手にとっても優しさであり、
身体に、心に伝わってくる。

次が3品の盛り合わせの前菜。
団子状のものを食べて驚いた。
黄な粉のなかから現れたのは、酸味と甘みで食べなれた味だが、
意外性がいっぱい。
中身はなんと葡萄。
2球目の変化球。
それに、「カマス鮨」。
こちらはカマスの皮目を炙ってあって、
香ばしさが酢飯によく合う。
日本酒とともに、
神楽坂のイタリアン・フレンチのオーナーのI氏が持ち込んだ
ムルソー「フィリペ・シャビー2004」を開けていただく。
ムルソーにしては、
すっきりと綺麗で繊細なニュアンスを持った味わいで、
酸味がカマス鮨によくマッチしている。

この皿の最後の一つは白いすり身のようなもので、
松の実が添えてある。
あとで岩本さんに聞いたら「鰆豆腐」。
強い主張はないものの、しっとりとした旨さが愉しめる。

そして「スッポン」の椀が登場。
本当にしみじみとした味わいで、あとを引く。
スッポンの深い味わいと滋養。
ゼラチンのプルンとした食感。
全てが合わさって、穏やかな優しさが感じられる。
スッポンにはムルソーよりやはり「おでんでん」。
そして、次に登場したお造りがまた秀逸だった。
それが、鯛と車海老。
それに小さなキノコが添えてある。
この鯛の深い甘みが凄い。

村さんがすかさず言った。
「これは、鳴門の砂浜でとれる鯛です。
 磯の鯛は海草を主に食べているけど、
 この鯛は砂浜にいる海老を食べている。
 その海老の甘みが鯛に移っていて、
 一匹ごとに個性が違うんです。」
納得。
しかし、岩本さんが
どうしてその鯛を市場から探してこれるのだろうか?
ここで、さらに村さんが紹介したのは、
岩本さんから教わった魚の目利き。
人差し指の腹で魚の腹をなぞるという。
指の先ではわからない、魚の中の状態が分かるらしい。
徳島の山奥の宴はさらに続く。
赤ワインも開けられた。


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2006年10月11日(水)

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