第483回
極上野沢菜は懐かしい味
野沢菜というと、酒のつまみで食べてもよいが、
ご飯のともとしても活躍できる。
最悪つまみが野沢菜だけであっても、
2合から3合くらいはこれに合わせて飲めるので、
大変重宝な漬物だ。
信州に行くと野沢菜を食べるのが一つの愉しみであったが、
最近の土産ものの袋を見ると添加物がいっぱい。
そういうものは、味も不自然につけたような感じがしてくる。
ということで、少し野沢菜からは遠ざかっていたのだが、
添加物を極力使わずに自然な味のする、
昔懐かしい野沢菜に遭遇した。
ある日、行き着けの居酒屋である高田馬場「真菜板」を訪問した。
日本酒好きの女性をお二人案内する予定が、
彼女たちは遅れている旨の連絡があり、
一人でまずは店に立ち寄った。
先客は同じく常連のMさん一人。
彼が食べている野沢菜がなんとも美味しそう。
店主の杉田さんがすぐに同じ野沢菜を出してくれた。
おそるおそる味見。
これが旨い。
緑色の新漬けと茶褐色になった古漬けの2種類があったが、
どちらも無添加で塩だけで漬けたものだという。
新漬けはしゃりっとした食感のなかから、
野沢菜のフレッシュな香りと塩味が顔を出し、
嫌でも食欲が蘇ってくる。
これに、能登の珠洲市の地酒
「宗玄」山田錦純米無濾過生原酒を冷で合わせる。
とたんに、野沢菜の旨みが強くでてくる。
次が古漬け。
同じ漬け方で1年以上漬けたもの。
こちらは、発酵した旨みがなんともいえない。
新漬けが若い女性のあどけない美しさなら、古漬けは熟女の色気。
こちらは、姫路の地酒「白影泉」(奥播磨)の燗がとてもよく合う。
造っているのは、創業明治38年。
諏訪市駅前に本店がある「橘屋松尾商店」。(※1)
Mさんの故郷で、お土産に持ち込んでくれたもの。
工場は蓼科の標高千メートルのところにあるという。
インターネットでも販売しているというので、
今度自宅に取り寄せることにした。
※1 http://www.matuo.net/
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