|  第406回明太唐墨の不思議
 このコラムを愛読してくれていただいている、宮本一徳さんから『明太からすみ』をいただいた。
 宮本さんは「うみ工房 」という店で、
 日本で初めて『明太からすみ』の開発に成功したそうだ。
 他の店でも明太からすみを作ろうとしていて、
 成功したところはないようで、
 宮本さんの独創的な工夫はたいしたものと思える。
 スケトウダラの卵を羅臼昆布、鰹節、魚介などで
 構成したタレに漬けこみ、熟成させて明太子を作成して、
 それを乾燥させてつくる。
 昨年もいただいたが、あまり印象には残らないものだった。それが、今年のものは素晴らしい美味しさで
 完成度が高くなっている。
 スケトウダラは鯔子と違い皮が薄いので、
 炙らずにそのまま生で食べてほしいとのコメントが
 宮本さんから送られてきていたので、
 まずは、酒の肴にいただく。
 合わせたお酒は奥播磨の山田錦80%純米無濾過生原酒。
 明太子は以前日本酒に合わせようとしても、
 ピリ辛の味が口の中に残って、
 日本酒の柔らかい味わいを殺してしまう。
 きっと焼酎のほうが合うのだろうと思っていたが、
 若い焼酎は苦手なので試したことはなかった。
 ところが、この明太からすみは、辛さがとてもマイルド。口に入れたときには、ぴりっとした辛味が刺激する。
 しかし、それがすぐに消えてしまって残らない。
 スケトウダラの卵の旨みに、
 乾燥させたほどよい苦味がバランスをとって口の中に残る。
 乾燥することによって、
 辛味がこれだけ穏やかになることにびっくりした。
 もちろん、奥播磨の深みのある旨みによくあう。
 次に、蛸の足を湯引きした刺身の間に挟んで食べてみる。
 これがまたいける。
 蛸の甘みと「明太からすみ」のコクが溶け合う。
 最後にご飯に乗せ、明太からすみ丼。
 犯罪的な美味しさで、ご飯がすすむこと。
 最後のお茶がひときわ旨かった。
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