“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第334回
池袋「坐唯杏 別館」開店

池袋の「坐唯杏」(ざいあん)といえば、
いまではメディアでもよくとりあげられている人気店で、
連日満席状態が続いている。
それもそのはず、オーナーの武内さんは
土佐料理店などで修行してきた経歴があるが、
安い値段で美味しい料理を食べてもらおうという
工夫、努力をかかせていない。
武内さんの創意工夫の才能はなかなかたいしたもの。
「イタリア蒸し」というチーズとトマトを使った茶碗蒸しは
「日経レストラン」のメニューコンテストで、
準グランプリを獲得している。
〆鯖、鰹のタタキなどの定番和食の調理も完璧だ。

武内さんが自分の店を持ったのは1996年。
西武池袋線「東長崎」駅前の商店街のゲーム屋の2階にあった。
この近くに「甲州屋児玉商店」があり、
そこから武内さんは地酒を取り始めた。
甲州屋の常連だった私はそんな縁で坐唯杏を知り、通い始めた。
武内さんの料理の技と甲州屋からとる地酒の相性はとてもよく、
頻繁に訪問し始めた。
私が主宰をしている美味しいものを食べるための
情報交換のメイリングリストの発足会も
迷うことなく坐唯杏を会場に選定した。
そして甲州屋が廃業して地酒の取り寄せに困っているときには、
笹塚の「マルセウ本間商店」を紹介した。
以来、坐唯杏の地酒の品揃えは
本間さんが厳選したものが主体だ。

しかし、西武線沿線の商店街のなか、
それもゲームセンターの2階というロケーションは、
地元客以外を呼び寄せることはなかなか難しかった。
武内さんはより都心に近いところに店を移転することを考え、
ついに2002年の春に東長崎の店を引き払って、
池袋に現在の「楽旬堂 坐唯杏」を開設する。
そして、「dancyu」をはじめとして、
色々なグルメ雑誌に紹介されるようになって、
坐唯杏は人気店となっていった。
今では満席で、せっかく来てくれたお客を
断らざるを得ないこともよくあるという。
お客に申し訳ない。
もう少しお店の面積があれば対応できるのに、
という武内さんおん思いが今回の別館の開店になった。

「坐唯杏 別館」は本店のむかいのビルの地下にある。
12月2日に開店したが、その前日の12月1日には
東長崎以来の常連へのお礼ということで
プレオープンのパーティが開催された。
店内はいたってシンプル。
オープンキッチンが広くとられていて、
調理場と客席の一体感がある。
カウンターとテーブル席数席は全部で20名くらいすわれるが、
立ち飲みもできるようだ。
料理は本店よりも安い。
本店でお腹いっぱいになって、
酔っ払って6000円から8000円くらいと、
とてもリーゾナブルであったが、
こちらは、さらに2割くらい安い。
酒の値段は本店と同じ。
ふらっといって利用できるとてもいい店だ。


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2005年12月8日(木)

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