第292回
蕎麦の美味しさを海外に紹介
NHKはワールドテレビという海外向けの放送サービスをしている。
そのなかで、ウィークエンド・ジャパノロジーという
ピーターバラカンさん、菊地真美さんが司会をしていて、
日本の伝統文化、季節の風物、食、暮らし、
最新のトレンドなどを世界に発信している番組がある。
その番組で蕎麦を海外に紹介したいという依頼があって、
出演することになった。
私が最適かどうかはわからにが、
少しでも蕎麦の食文化を
海外に知ってもらうことに貢献できればと考えたからだ。
どうも、条件は蕎麦のことを知っていることはもちろん、
番組が全て英語で収録するというので、
英会話ができることだったようだ。
私は英会話はそれほどは堪能ではないが、
以前ISO(国際標準を設立する団体)の
ワーキンググループの国際議長をやったことがあり、
自動車技術に関する専門的な会話なら自信があった。
それで、安易に引き受けてしまったが、
あとになって、蕎麦の「喉越し」って英語では何と言うのだろう?
蕎麦掻、玄蕎麦、丸抜き、さらしな粉、
挽きぐるみ、つなぎ、辛汁、甘汁、本返し、出汁、
などという蕎麦の専門用語がとっさに出てこない。
これは大変なことを引き受けたかもしれないと、
後悔の念もでてきた。
収録までに2週間くらいしかなかったので、
急いで専門用語を調べなくてはならない。
そこで、主宰している
グルメのメイリングリストの仲間に問いかけてみた。
すると、もつべきものはメイリングリスト仲間。
すぐさま、蕎麦のことを英語で紹介している本を教えてもらった。
James
Udesky,”The Book of Soba” Kodansha International
さらに、この本は出版元にも切れていて、
古本を入手するしかない状態だが、
その紹介してくれた友人がすぐさま貸してくれた。
ユデスキーさんとはジョークのような名前だが、
本名で、以前テレビで紹介されていたのを見たこともあった。
この本は素晴らしくよくできていて、
かなり深い内容で蕎麦打ち、蕎麦メニュー、
具、汁、栄養、歴史、そば屋紹介、蕎麦栽培などが
詳しく記されていた。
この本は何度も斜め読みして、
だいたいの蕎麦の専門用語を頭に入れることができた。
しかし、まずは浅草のそば屋で蕎麦を注文して、
食べて感想を言う、というロケ時には、
付け焼刃の単語がすぐには出てこない。
冷や汗をいっぱいかきながら、どうにかロケが終わった。
このビデオを本番のスタジオ収録のときに見たが、
色々と感想を言ったのはほとんどカットされていて、
最後に、
”Uhm, excellent!”
と一言しめた言葉だけが残っていたので、
よっぽど出来が悪かったのだろう。
本番のスタジオ録りでは、
ピーターバラカンさん、菊地真美さんと英語でやりとりをする。
台本は一応あるが、それに沿っているだけでなく、
右に行ったり左に行ったりというアドリブ対応に
また冷や汗をかいた。
放映は10月21日だが、日本のチャンネルでは見られない。
しかし、海外の人たちに
少しでも蕎麦を食べる日本人の食文化を理解してもらえたら幸せだ。
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