“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第281回
海外への和食進出の可否

海外では、鮨、照り焼きステーキ以外の和食は少ない。
パリやニューヨークでは割烹料理屋や居酒屋も結構多いが、
いずれも日本人が料理をしていて、
地域に根付いたものではない。
これは、日本でフレンチ、イタリアン、中華の
各料理屋の状況と比べると雲泥の差がある。
これらの日本人にとって海外の料理分野は、
日常のごとく消費者に受け入れられていて、
大都市には多数の店がオープンして商売が成り立っている。
そして、海外のシェフだけでなく、
日本人の料理人の手によって、
相当なレベルのものが作られている。

このように、日本では海外の料理が
日本人の生活の一部として根付いている。
しかし、これに比べて和食は、鮨、照り焼きステーキ以外は、
海外で根付いたという状況からは、程遠い。
今日の日本のフレンチ、イタリアンの料理屋では、
料理人がフランス、イタリーに修行に行って、
調理技術を学んでくることが常識に近くなっている。
しかし、和食を学びに来る海外の料理人というのは、
あまり話しを聞いたことがない。
それだけ、和食が海外でメジャーではない
という理由があげられるだろうが、
それでは、鶏と卵の関係で、
いつまでたっても海外の和食料理人が
育つ環境にはならないだろう。

手打ち蕎麦ではジェームス・ユデスキーという
駄洒落のような名前の米国人が有名だが、
彼も米国で蕎麦屋をやろうと試みても、なかなか難しいらしい。
日本人ではない人が蕎麦を打っている蕎麦屋には、
お客が入らないらしい。
これらの、難しい壁を乗り越えて、
和食が世界に根付く料理として認められるようになるには、
まずは、本格的な日本料理店を海外に進出させて、
成功を収める事例をだんだんと多くしていくことが必要だ。

また、根源にある問題として、
日本の行政が日本の食文化を大切にしていない
ということが挙げられる。
フランスでは、フランス料理の発展に寄与した料理人に対しては
政府から勲章が渡されるが、
日本では和食の職人に褒章がなされた例は極めて少ない。
きくところによると、
日本人のフランス料理シェフに
フランスからは多くの勲章が与えられているようだ。
このように、日本の伝統食文化を
行政がきちっと守っていく姿勢を見せない限り、
和食が世界を席巻するのは難しいのかも知れない。


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2005年9月26日(月)

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